黒手組
本文約17,900字 ・ 読了時間 約36分
あらすじ(AIが作成しました)
都を震撼させる怪賊「黒手組」が跳梁する中、伯父の娘・富美子が誘拐され、一万円の身代金を奪われる事件が発生する。身代金を渡しても娘が帰らぬことに焦る伯父を前に、語り手は明智小五郎に助けを求める。明智は手元に残された一枚の葉書を糸口に、神出鬼没と恐れられた犯人像とその驚くべき真相を追い始める。果たして明智は、富美子を救い出し、霧に包まれた「黒手組」の正体を暴くことができるのか。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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(上)顕れたる事実
またしても明智小五郎の手柄話です。
それは、私が明智と知合になってから一年程たった時分の出来事なのですが、事件に一種劇的な色彩があって中々面白かったばかりでなく、それが私の身内のものの家庭を中心にして行われたという点で、私には一層忘れ難いのです。
この事件で、私は、明智に暗号解読のすばらしい才能のあることを発見しました。読者諸君の興味の為に、彼の解いた暗号文というのを先ず冒頭に掲げて置きましょうか。
一度お伺いしたい/\と存じながらつい
好い折がなく失礼ばかり致して居ります
割合にお暖かな日がつゞきますのね是非
此頃にお邪魔させていただきますわ扨日
外は[#「は」は「×」付き]つまらぬ品物をお贈りしました処御
叮嚀なお礼を頂き痛み入りますあの手提
袋は実はわたくしがつれ/″\のすさびに
自か[#「か」は「×」付き]ら拙い刺繍をしました物で却ってお
叱りを受けるかと心配したほどですのよ
歌の方は近頃はいかが?時節柄御身お大
切に遊ばして下さいましさよなら これはある葉書の文面です。忠実に原文通り記して置きました。文字を抹消したところから各行の字詰に至るまで凡て原文のままです。
さてお話ですが、当時私は避寒旁々少し仕事を持って、熱海温泉のある旅館に逗留していました。毎日幾度となく湯につかったり、散歩したり、寝転んだり、そしてその暇々に筆を執ったりして至極暢気に日を送っていたのです、ある日のことでした。又しても一風呂あびて好い気持に暖まった身体を、日当りのいい縁側の籐椅子に投げかけ、何気なくその日の新聞を見ていますと、ふと大変な記事が眼につきました。