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TORENDIA

墨色

本文約4,700字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

日本画家である友人の画室を訪れた筆者は、彼が独学で行う墨色の科学的な研究に関心を寄せる。N氏は硯と蒸留水、紙を一定の条件に整え、墨ごとの色調の差を丹念に記録して墨色図鑑を作成していた。筆者はこの探究心に感銘を受けつつ、寺田寅彦による膠質学的研究の系譜や、炭素の構造、色調に関する科学的な難しさに言及する。東洋文化の象徴である墨の深奥なる謎に迫るため、地道な研究の積み重ねが必要であることを綴る。

中谷宇吉郎

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🎧 墨色 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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私が初めて墨色というものに興味を惹かれたのは、友人金沢の日本画家N氏の家でのことであった。N氏は洋画出身であるが、其の後支那の旧い文化に興味を持ち始めたのが動機で、今では日本画家としての方が通りが良い。二十年近くも前のことであるが、私が金沢の高等学校に在学時代、初めて知り合いになった頃は、支那の仏教典籍に凝っていて、鳥巣禅の図などを描いて呉れたことがあった。その後大学へ行ってからは、私は専門の方の勉強に忙しくなってしばらくN氏との交渉も途絶え勝ちになっていたのであるが、五、六年前に金沢へ立ち寄った時に久し振りで同氏の画室を訪れたことがあった。

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