根岸庵訪問の記
本文約2,300字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
病床に伏す正岡子規の容態を案じる著者が、複雑な心境を抱えつつ根岸の庵を幾度か訪問する様子を綴る。執筆活動を続けながらも衰弱が進む子規の壮絶な闘病生活と、寝返りすらままならない極限状態の苦痛が語られる。それでもなお平賀元義に関する執筆に意欲を燃やす子規の姿と、二人の対話を通じて交わされる最後の親密な交際の記録である。本稿は、見舞いの実体験をもとにした病中の風俗と心情をありのままに収める。
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近来不良勝なる先生の病情片時も心にかからぬ事はない。日本新聞に墨汁一滴が出る様になってから猶一層である。或は喜び或は悲み日毎に心を労している いくらか文章に勢が見えて元気なことなどの出た日には。これ位ならばなどと心細い中にも少しく胸が休まるような感じがするものの実際は先生の病情少しも文章の上では推測が出来ないのが普通であるのだ。
歌の会俳句の会すべてを止めて余り人にこられては困ると云うようになってよりは。たずねてよいやら悪いやら殆どわからないけれども。愈ゆくまいと云う気にはどうしてもなられない。つまり余りゆくもわるい余りゆかぬも悪るいだろうと思うた。時々の先生の話振からでもたまには行く方がよいように感じたから。人は兎に角自分は時々は是非訪問することと極めたのである。余りま近くゆくこと余り長居することだけは固く謹もうと思うた
今月はきょう迄に三回たずねた 月始りは三日の日に一度たずね。それから七日の日にはわざわざでない上野辺に聊か用事があったので。きょうはと思い午後の四時じぶんに先生の門前迄往ったが。ふと考えてみるとまだ三日しか間がない 余りま近く重なるはよくあるまいかしらんと気がついたので。門前に躊躇しながら内をのぞいてみると。女の下駄が三足あるけれどちゃんと内へ向いて並んでいる よその人のらしくない 客もないなとは思うたがまずまず今日はよるまいと決心した。