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TORENDIA

誤診

本文約5,100字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

ある男がかつて診察を受けた医師のもとを再訪し、結核の誤診により妻子を毒殺した過去を語る。医師から何ら異常はないと告げられた男は、誤診が引き起こした自身の罪を糾弾する。かつて自身の肺病を信じ込み、家族への感染や遺伝を恐れて運命の神の代理として愛する者たちを殺害した男は、自分が健康であった事実を突きつけ、医師と共に死の判決を下す。本作は、医療の過ちが招いた狂気と破滅を冷徹に描く物語である。

モーリス・ルヴェル Maurice Level

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🎧 誤診 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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「先生」

とその男はいった。

「僕に結核があるかどうか、御診察の上で、包みかくしのないところを仰しゃって下さい。大丈夫ですよ、僕は確かりしています。どんな診断を聞かされたって平気なもんです。第一、先生はぶちまけていって下さる義務があります。それに、僕は自分の病状を知っておく権利があると思う。ですから是非聞かして頂きたいんです」

ドクトルは一寸ためらったが、肱掛椅子を退らかして、火の燃えさかっている暖炉の棚へ倚りかかりながら、

「承知しました、着物をお脱ぎなさい」

そして患者が服を脱いでいる間に、問いをかけた。

「衰弱を感じますか。寝汗はどうです……朝、明け方にはげしい咳が出るようなことがありませんか……御両親はお達者ですか。うむ、何病でお亡くなりでしたかね……」

患者はやがて上半身だけ裸になって、

「さア仕度が出来ました」

ドクトルは打診をはじめた。患者はその打診音の一つも聞きもらすまいと踵をそろえ、両腕をさげ頤をつき出して、耳を澄ました。ひっそりとした室の中にその指の音が鈍い音調でひびいた。

それから長い念入りな聴診をやったが、それが済むと、ドクトルは笑いながら軽く男の肩をたたいていった。

「着物をきてよろしい。貴方はえらい神経家ですね。だが保証します、何処も何ともない。些とも悪いところはない……どうだね、これで満足しましたか」

服を着かけていたかの男は、両腕をあげたまま、シャツの前穴から顔を出したところだったが、薄笑いをうかべながら屹度ドクトルを睨みつけて、

「ええええ、大満足」

彼はそれっきり黙って着物を着てしまったが、ドクトルが卓子に向って処方を書いているのを見ると、

「そんなものは要りません」

と手真似で制めて、かくしから取りだした一ルイの金貨を卓子の隅においた。それから彼は坐りこんで語りだした。声は少しふるえを帯びていた。

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