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TORENDIA

情状酌量

本文約6,300字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

新聞で倅の殺人容疑を知ったフランソアズは、息子の潔白を信じて兵営へ向かう。弁護士から罪状が確実であることを告げられ絶望するが、死刑を免れさせたい一念から裁判で偽証を決意する。法廷で自身こそが過去の盗みの首謀者であり、息子は自分をかばうために罪を重ねたと虚偽の自白を行う。この情状酌量により息子の刑は無期懲役に減刑されるが、母は村で孤立し、孤独のうちに生涯を終える。

モーリス・ルヴェル Maurice Level

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🎧 情状酌量 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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フランソアズは倅が捕縛されたということを新聞で読んでぎょっとした。

けれど、初めのうちはとても真実と思えなかった。それはあまりに途方もない出来事であったから。

可愛い倅はごく内気な律儀者で、こないだの復活祭の休暇には、彼女の許へ帰省していた。そして隊へ帰って行ってからまだ一月と経たぬのに、その者が賊を働いた上に殺人罪を犯したということがどうして信じられよう。

倅が兵隊服を着て、あのまん丸な若々しい顔に人懐っこい微笑をうかべながら佇っている姿が、今もまざまざと見えるようだ。そして別れ際に、彼が、皺くちゃの頬ぺたに接吻をしてくれたっけ――そんなことを思いだすと、彼女は平和な、幸福な記憶で胸が一杯になるのだ。

「きっと何かの間違だわ。人違いなんだよ」

彼女は肩をすぼめて独りごとをいった。

だが、新聞では『兵卒の犯罪』という大標題の下に仰々しく書き立てている。それは兵営内に起った怪事件で、しかもその犯人として、倅の名が判然と掲げられているではないか。

彼女は当惑して椅子にうずくまった。眼鏡を額にはねあげて、両手をかたく握り、唇をふるわせて独りごとをいいながら、老ぼれた飼犬が、寂然と暖かい台所の開け放した戸口に寝そべっている姿をば、きょとんとした眼つきで見るともなしに見ていたが、やがてその視線を懸け時計の方へうつした。時計はチクタクと緩たり重々しい音で時を刻んでいた。

そのとき誰か木戸を入って来る気配に、彼女はびっくりして、

「誰方」

と声をかけた。

近所の女がやって来たのであった。

フランソアズは、自分の心配事に感づかれては大変だとおもって、すぐにこんなことをいった。

「わたし、好い気持で居眠りをしていたのよ。ほんとうに暖かくなりましたねえ」

そして、いつもの無口にも似合わず立てつづけに饒舌をした。問いをかけられるのが恐ろしいものだから、成るだけ相手に口を開かせないようにするのだ。そのくせ、この女は倅の事件を知っていはしないか、ということが絶えず気がかりだった。

そのうちに話題も種切れになったので、仕様事なしに黙りこんでしまった。すると近所の女は変な顔をして、

「息子さんから暫く音信がないんでしょう」

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