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TORENDIA

西洋の浜焼

本文約4,800字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

アルゼンチンの氷河学者から聞いた、南米インディアンの野外料理「クラントウ」を紹介し、あわせて米国ニュー・イングランド地方で体験した類似の浜焼料理「クラムベーク」について綴る。地元の海藻を用いて貝や海産物を蒸し上げる独特の調理法や、土地の風習、食文化を詳細に記録する。また、異文化の食事に対する現地の研究者たちの反応を通じ、食と風土、個人の味覚感覚の違いについて考察を加え、筆者の体験と食に対する想いを記した随筆である。

中谷宇吉郎

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🎧 西洋の浜焼 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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アルゼンチンの浜焼

アルゼンチンから来ている氷河学者から、南米インディアンの料理の話を聞いた。クラントウというのだそうで、原理からいえば、鯛の浜焼のようなものであって、別に珍しい話ではないかもしれないが、ただ規模の大きいところが、ちょっと変っている。これは野外で、大勢の仲間があつまって食事をする場合に限られている。アルゼンチンの草原の広々としたところが舞台である。

まず地面に大きい穴を掘って、その中に石塊をたくさん放り込む。そして丸太をその上に積んで、盛大な焚火をする。丸太がだいたい燃え終る頃は、石塊も土も赤熱に近いくらい熱くなっている。おきはそのままにして、燃え残りの丸太だけを取りのけて、この、いわば炉になっている穴の中にいろいろな材料を放り込むのである。

最初は肉であるが、これが甚だ規模雄大な話で、ふつう羊か、子牛かを一頭丸ごと入れるのだそうである。牛を一頭放り込んだという話は、この頃はあまりないが、昔はやったという話である。羊でも子牛でも、文字通り[#「文字通り」は底本では「文子通り」]丸ごとであって、頭も皮もそのまま、毛までついたままで放り込む。もっとも腸だけは出しておく。

それから何とかいう木の大きい葉をたくさん用意しておいて、それを何重にも羊の上にかぶせる。そしてその上にいろいろな野菜類をならべて、また、葉でおおう。何でもこの葉は非常にたくさん使うので、何重にも重ねて、蒸気の洩れる隙間がないようにするのだそうである。そしてまたその上に、今度は、蝦だの、貝だの、魚だのを一杯にならべて同じように葉をかぶせる。その上にさらに、一番早く蒸せる野菜類をならべて、また葉でおおう。

こういうふうに盛り上げていくうちに、穴はいっぱいになり、さらにどんどん上に積み上がって、小さいドームのような形になる。最後には、葉を二寸くらいも重ねて、ぴったりとおおってしまう。少しでも蒸気の洩れるところがあると、そこへ葉をかぶせて止めるわけである。

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