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TORENDIA

室生犀星君の飛躍

本文約2,300字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

室生犀星は、長年築き上げた庭や陶器を愛する風流生活という芸術的財産を自ら破壊し、新しい美と生活を創造するために立ち上がる。萩原朔太郎は、過去の芸術を卒業し、素裸の文学書生として変化しようとする室生の勇敢な姿を論じる。本書評は、マンネリズムに陥る文壇の現状を批判しつつ、自らの表現を追求して変革を恐れない詩人の本然的な力と、新たな創造へ向かうその切実な意志の強さを描き出している。

萩原朔太郎

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🎧 室生犀星君の飛躍 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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僕は一つの飛躍を見た! 室生犀星君に就いてである。

最近二三ヶ月の間に、彼は驚くべき跳躍をした。勇敢にも、過去の一切を投げ出し、鷲のやうに空を飛んだ。僕はそれを見て勇氣が起り、慄然とし、人生の力ある意志を感じた。

實に室生犀星の今日あるは、僕がかつて前に豫感し、且つ言つたのである。(雜誌・椎の木所載・室生犀星君の心境的推移について・參照)それは最近出版された彼の詩集『故郷圖繪集』を見た時、最も明白に直感された。何となればその詩集は、二つの別な方向を目ざす所の、互に矛盾した心境からなつてるもので、二部混亂の不統一を示してゐたから。僕がその詩集を讀んだ時に、矢のやうに來り、早くも心に浮んだものは、室生の心境生活の變化であつた。一方に於て、彼はその風流哲學を徹底させ、身を以て藝術を完成させようとする芭蕉的人生觀を持しながら、一方に於ては之れに裏切り、憤激して一切を破壞しようとする所の、矛盾の止みがたい苦惱があつた。詩集『故郷圖繪集』は、この二つの心境の對立した、苦々しく不調和な表象を讀者にあたへた。

傷ましいかな! 今や犀星の風流生活は、その必然的の破滅に際してゐる。新しいものが、來るべき生活の展開が、彼について近く起るだらうと、僕はその時以來考へてゐた。そしてそれ故に――實にそれ故に――僕は勇躍して室生犀星論を書き、彼に對する友誼的公開状を發表した。もちろん僕は、それによつて彼を怒らすことを考へてゐた。だが室生は、僕について怒るよりも、むしろ彼自身について怒り、早く既に生活の展開を準備してゐた。今や我が室生犀星は、あらゆる悲痛な勇氣をもつて、その長く築きあげた藝術の城を破壞し、自ら叫んで野獸の如くならうとしてゐる。實に室生犀星の勇敢と正直さとは、彼自ら芥川君について言つた如く、悲壯にもその『風流の假面を肉つきのままで引つぺがした』のである。(この室生の言が、芥川龍之介について言つたのでなく、室生自身について言つたのであることは、少し敏感の讀者になら解る筈だ。彼はいつでも、さういふ物の言ひ方をする。)

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