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TORENDIA

汽船の改良

本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

船酔いに悩まされる乗客の切実な願いを背景に、汽船の横揺れや縦揺れを防ぐための様々な技術的工夫を論じる。船底の鰭やジャイロスコープを用いた横揺れ防止策の歴史的試みを紹介し、振動の原因となる機関の反動や、タービン機関による改善点についても解説する。さらに、速力と運賃の相関関係に触れながら、日本国内の航路においても、より速く快適な船の建造を求める著者の期待を綴る。

寺田寅彦

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🎧 汽船の改良 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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船に酔わぬ人に云わせると航海ほど愉快なものはない。しかし吾々船に弱い者から見るとこんな厭なものはない。船室に潜り込んだが最後、もう頭が上がらぬ。海上の日の出がどんなに美しかろうが、海鳥が飛ぼうが、鯨がはねようがそんな事はどうでもよい、一刻も早く目的地に上陸して動かぬ地盤が踏みたいと願う。そしてなるべくなら船に乗りたくないと思うが、海国の悲しさには、ちょっと踏み出せば是非とも船でなければならぬ。止むを得ないとなればどうか揺れない船が欲しいと思うた、誰も変りはあるまいと思う。

造船学者の方から見れば汽船の改良すべき点は色々あろうが、乗客の側から云えば船体の構造、機関の種類はどうでもよい、ただ安全で、動揺が少なくて、そして速力が大きければよいのである。造船学者もこの点については如才なく色々工夫をしている。

船の動揺には横揺れと縦揺れとある事は誰も知る通りで、大抵の場合には両方同時に起る。殊に小さな汽船の艫の方などへ乗ると、縦横に揺り上げ揺り下ろされる。もしどちらか一方だけでも出来ればいくぶんか楽であろうと思われるが、この中で横揺れの方だけはよほど少なくする方法が色々発明されている。

第一に、船底にビルジキールと名づくる鰭のような物を着けると、その抵抗でよほど揺れが少なくなる。巧く作れば動揺の角度が半分くらいにはなる、これは実際今日でも用いられている。

第二には船の中に大きな空室を作り、その中に水を満載し、船の動揺に応じて適当に水を動揺させ、その作用で横揺れを防ぐという工夫が今より二十年前、英国の二、三の汽船に応用されたが、あまり面白くなかったと見えてその後は用いられぬ。

第三には仏国学士院へクレミユという理学者が提出した新案である。船の中に大きな重い振子を吊し、その周囲に粘い油を入れるというのであるが、まだ実際の試験をするところまで行かぬらしい。

第四には英国のソーニークロフトという人が、巧妙な仕掛けでごく重い重量を自働的に船の左右に交互に動かして、波のために起る動揺を防ぐ事を考え、実際の汽船に取付けて試験してみたら、かなりによく行ったそうである。しかしその後あまり用いられぬ。

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