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TORENDIA

ひょっとこ

本文約5,700字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

吾妻橋の欄干に多くの見物人が集まり、花見船が行き交う川を眺めている。その中の一艘で、酔った山村平吉がひょっとこの面をつけ、派手に馬鹿踊りを繰り広げる。平吉は酒に酔うと人格が豹変する男であり、普段は常に嘘をつく癖がある。船上で踊り続ける平吉は、川蒸汽の波を受けて転倒する。騒ぎの中で船は岸へ向かうが、彼はそのまま意識を失う。平吉は面の下で、愛嬌のある素顔とは異なる形相で横たわる。

芥川龍之介

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🎧 ひょっとこ / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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吾妻橋の欄干によって、人が大ぜい立っている。時々巡査が来て小言を云うが、すぐまた元のように人山が出来てしまう。皆、この橋の下を通る花見の船を見に、立っているのである。

船は川下から、一二艘ずつ、引き潮の川を上って来る。大抵は伝馬に帆木綿の天井を張って、そのまわりに紅白のだんだらの幕をさげている。そして、舳には、旗を立てたり古風な幟を立てたりしている。中にいる人間は、皆酔っているらしい。幕の間から、お揃いの手拭を、吉原かぶりにしたり、米屋かぶりにしたりした人たちが「一本、二本」と拳をうっているのが見える。首をふりながら、苦しそうに何か唄っているのが見える。それが橋の上にいる人間から見ると、滑稽としか思われない。お囃子をのせたり楽隊をのせたりした船が、橋の下を通ると、橋の上では「わあっ」と云う哂い声が起る。中には「莫迦」と云う声も聞える。

橋の上から見ると、川は亜鉛板のように、白く日を反射して、時々、通りすぎる川蒸汽がその上に眩しい横波の鍍金をかけている。そうして、その滑な水面を、陽気な太鼓の音、笛の音、三味線の音が虱のようにむず痒く刺している。札幌ビールの煉瓦壁のつきる所から、土手の上をずっと向うまで、煤けた、うす白いものが、重そうにつづいているのは、丁度、今が盛りの桜である。言問の桟橋には、和船やボートが沢山ついているらしい。それがここから見ると、丁度大学の艇庫に日を遮られて、ただごみごみした黒い一色になって動いている。

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