二つの手紙
本文約11,700字 ・ 読了時間 約24分
あらすじ(AIが作成しました)
自身と妻のドッペルゲンゲルを目撃したと主張する男が、警察署長へ宛てた二通の手紙を綴る。男は、自身の分身が妻と密会している姿を市中で見て以来、周囲から不品行を疑われ、激しい社会的迫害を受けていると訴える。やがて妻が失踪したことを受け、男は警察の対応を糾弾し、世間の無理解に対する憤りと、自らの体験が超自然的な現象であるという確信を書き連ねることで、追い詰められた精神の深淵と家庭の崩壊を描く。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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ある機会で、予は下に掲げる二つの手紙を手に入れた。一つは本年二月中旬、もう一つは三月上旬、――警察署長の許へ、郵税先払いで送られたものである。それをここへ掲げる理由は、手紙自身が説明するであろう。
第一の手紙
――警察署長閣下、
先ず何よりも先に、閣下は私の正気だと云う事を御信じ下さい。これ私があらゆる神聖なものに誓って、保証致します。ですから、どうか私の精神に異常がないと云う事を、御信じ下さい。さもないと、私がこの手紙を閣下に差上げる事が、全く無意味になる惧があるのでございます。そのくらいなら、私は何を苦しんで、こんな長い手紙を書きましょう。
閣下、私はこれを書く前に、ずいぶん躊躇致しました。何故かと申しますと、これを書く以上、私は私一家の秘密をも、閣下の前に暴露しなければならないからでございます。勿論それは、私の名誉にとって、かなり大きな損害に相違ございません。しかし事情はこれを書かなければ、もう一刻の存在も苦痛なほど、切迫して参りました。ここで私は、ついに断乎たる処置を執る事に、致したのでございます。
そう云う必要に迫られて、これを書いた私が、どうして、狂人扱いをされて、黙って居られましょう。私はもう一度、ここに改めてお願い致します。閣下、どうか私の正気だと云う事を御信用下さい。そうして、この手紙を御面倒ながら、御一読下さい。これは私が、私と私の妻との名誉を賭して、書いたものでございますから。