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TORENDIA

懶惰の歌留多

本文約12,500字 ・ 読了時間 約25分

あらすじ(AIが作成しました)

怠惰を自身の最大かつ恥ずべき欠陥とする著者が、言い訳を重ねながらも結局何もできない日常を綴る。執筆の苦悶や自己嫌悪、日常の空想、そして夜の狐火を巡る出来事などを断片的に描きつつ、自身を戒め、いかなる形式であれ書き続けることへの決意を記す。執筆の締め切りに追われながら、自らの無力さと対峙し、三十一歳という年齢で揺れ動く内面を率直に反映させた作品である。

太宰治

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私の数ある悪徳の中で、最も顕著の悪徳は、怠惰である。これは、もう、疑いをいれない。よほどのものである。こと、怠惰に関してだけは、私は、ほんものである。まさか、それを自慢しているわけではない。ほとほと、自分でも呆れている。私の、これは、最大欠陥である。たしかに、恥ずべき、欠陥である。

怠惰ほど、いろいろ言い抜けのできる悪徳も、少い。臥竜。おれは、考えることをしている。ひるあんどん。面壁九年。さらに想を練り、案を構え。雌伏。賢者のまさに動かんとするや、必ず愚色あり。熟慮。潔癖。凝り性。おれの苦しさ、わからんかね。仙脱。無慾。世が世なら、なあ。沈黙は金。塵事うるさく。隅の親石。機未だ熟さず。出る杭うたれる。寝ていて転ぶうれいなし。無縫天衣。桃李言わざれども。絶望。豚に真珠。一朝、事あらば。ことあげせぬ国。ばかばかしくって。大器晩成。自矜、自愛。のこりものには、福が来る。なんぞ彼等の思い無げなる。死後の名声。つまり、高級なんだね。千両役者だからね。晴耕雨読。三度固辞して動かず。鴎は、あれは唖の鳥です。天を相手にせよ。ジッドは、お金持なんだろう?

すべて、のらくら者の言い抜けである。私は、実際、恥かしい。苦しさも、へったくれもない。なぜ、書かないのか。実は、少しからだの工合いおかしいのでして、などと、せっぱつまって、伏目がちに、あわれっぽく告白したりなどするのだが、一日にバット五十本以上も吸い尽くして、酒、のむとなると一升くらい平気でやって、そのあとお茶漬を、三杯もかきこんで、そんな病人あるものか。

要するに、怠惰なのである。いつまでも、こんな工合いでは、私は、とうてい見込みのない人間である。そう、きめて了うのは、私も、つらいのであるが、もうこれ以上、私たち、自身を甘やかしてはいけない。

苦しさだの、高邁だの、純潔だの、素直だの、もうそんなこと聞きたくない。書け。落語でも、一口噺でもいい。書かないのは、例外なく怠惰である。おろかな、おろかな、盲信である。人は、自分以上の仕事もできないし、自分以下の仕事もできない。働かないものには、権利がない。人間失格、あたりまえのことである。

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