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TORENDIA

右門捕物帖

本文約25,600字 ・ 読了時間 約52分

あらすじ(AIが作成しました)

九月の江戸、菊見の節句の宴の席で、同心の伝六が姿を見せず、消息を絶つ。時を同じくして、自身番から死骸が忽然と消えるという不可解な事件が発生する。右門は一連の事態に怪しい女の影と、三蓋松の紋が関わっていることを突き止める。女に扮した正体不明の男による連続殺人と、その背後に隠された陰謀を巡り、右門が知略と腕力で事件の真相へと迫る姿を描く捕物帖。

佐々木味津三

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その第三十四番てがらです。

事の起きたのは九月初め。

蕭々落莫として、江戸はまったくもう秋でした。

濠ばたの柳からまずその秋がふけそめて、上野、両国、向島、だんだんと秋が江戸にひろがると、心中、川目付、土左衛門舟、三題ばなしのように決まってこの三つがふえる。もちろん、心中はあの心中、川目付は墨田の大川の川見張り、やはり死によいためにか、十組みのうち八組みまでは大川へ入水して、はかなくも美しい思いを遂げるものがあるところから、これを見張るための川目付であるが、土左舟はまたいうまでもなくそれらの悲しい男仏女仏を拾いあげる功徳の舟です。

公儀でお差し立ての分が毎年三艘。

特志で見回っているのが同様三艘――。

幡随院一家が出しているのが一艘に、但馬屋身内で差し立てているのが一艘。同じく江戸にひびいた口入れ稼業の加賀芳一家で見まわらしているのが一艘と、特志の土左舟はつごうその三艘でした。墨田といえば名にしおう水の里です。水から水へつづく秋のその向島に、葦間を出たりはいったり、仏にたむけた香華のけむりを艫のあたりにそこはかとなくなびかせながら、わびしいその土左舟が右へ左へ行き来するさまは、江戸の秋のみに見る悲しい風景の一つでした。

そのほかにもう一つ、秋がふけるとともに繁盛するものがある。質屋です。衣がえ、移り変わり、季節の変わりめ、年季奉公の変わりめ、中間下男下女小女の出入りどきであるから、小前かせぎの者にはなくてかなわぬ質屋が繁盛したとて、なんの不思議もない。

しかし、不思議はないからといって、伝六がこの質屋に用があるとすると、事が穏やかでないのです。

「いいえ、なにもね。あっしゃべつにその貧乏しているってえわけじゃねえんだ。これもみんな人づきあいでね。物事は何によらず人並みにやらねえとかどがたつから、おつきあいに行くんですよ。え? だんな。だんなは何もご用はござんせんかい」

「バカだな」

「え……?」

「えじゃないよ。きょうは幾日だと思ってるんだ」

「まさに九月九日、だんなをめえにしてりこうぶるようだが、一年に九月九日っていう日はただの一日しかねえんですよ」

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