右門捕物帖
本文約18,500字 ・ 読了時間 約37分
あらすじ(AIが作成しました)
お盆の十六日、料亭で親睦会を催す八丁堀の同心たちは、ある寺の墓が暴かれ、女性の遺体が切り刻まれる事件の噂話を耳にする。その話を聞いたむっつり右門は、ただちに事件の核心を見抜き、伝六とともに現場の寺へと向かう。鋭い観察眼を持つ右門は、鋭利な名刀による犯行と推測し、剣術道場を巡る捜査を開始する。やがて、恋情に駆られた若者による非道な悪計が浮かび上がり、右門は独自の裁きを下して事態を収束させる。
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――今回はいよいよ第七番てがらです。
由来、七の数は、七化け、七不思議、七たたりなどと称して、あまり気味のよくないほうに縁が多いようですが、しかし右門のこの七番てがらばかりは、いたって小気味のよい捕物美談ともいうべきもので、しかも事の勃発いたしましたのは、あの古井戸事件がめでたく落着してからまもなくの、といっても十日ほどたったちょうどお盆の十六日のことでした。
下世話にも、この日は地獄のかまのふたのあく日だなぞと申しますが、お番所のほうでも平生おえんまさまの出店みたいな仕事に従事しているためにか、この十六日ばかりは少数の勤番当直をのぞいては、いずれも十手取りなわをすててしまい、お昼すぎから例年うちつれだって築地河岸の木魚庵という料亭におもむき、親睦会をかねた慰労の宴を催すならわしでしたから、右門もちょうど非番でございましたので、少しおそがけに伝六を伴って、その会場に出向いてまいりました。
ところが、この木魚庵というのが、お盆の十六日に宴会なぞするにはもってこいの、いたって風変わりな料亭なんで、当時の江戸名物帳を見ましても、そのもようがちゃんと記載されてありますが、河岸にのぞんだ横町にはいっていくと、まずお寺の山門になぞらえた大玄関の入り口が人の目をそばだてるのです、むろんのこと、そこには小さいながらも鐘楼があって、給仕は全部女気ぬきの十二、三くらいな小坊主ばかり。料理、器物、いっさいがっさいがまたお寺にちなんだ抹香臭いものばかりなんでしたが、しかし酒は般若湯と称して飲むことを許され、しかもその日の会費はしみったれな割り勘なぞではなく、全部お番所のお手もと金から出ることになっていたものでしたから、右門たちが行ったときは非番の者の残らずが全部もう席について、あちらにもこちらにもめいめいが、めいめい同気相求むる者たちとひざをつらねながら、すでに酒三行に及んでいるさいちゅうでした。