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TORENDIA

緑の芽

本文約4,800字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

菊枝は教員の試験を目指し、夜遅くまで書物に向かう日々を送る。しかし、朝寝坊を繰り返す彼女の姿勢に対し、祖父や継母は農家の娘が労働を怠るものと厳しく非難する。家族の反感に苦しむ菊枝に対し、父の松三は、農村で虐げられる女性の半生を憂い、山仕事の合間に勉学に励むよう促す。家計を支えるために自分を犠牲にしようとする娘の真情を知った父は、密かに受験への道を支援し、二人の間に温かな絆が生まれる。

佐左木俊郎

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🎧 緑の芽 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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一

弾力に富んだ春の活動は、いたるところに始まっていた。

太陽は燦爛と、野良の人々を、草木を、鳥獣を、すべてのものを祝福しているように、毎日やわらかに照り輝いた。農夫は、朝早くから飛び起きて、長い間の冬眠時代を、償おうとするかのように働いていた。

菊枝はまだ床の中で安らかな夢に守られているらしかった。父親は、朝飯前にと、近所へ出掛けたきり、陽は既に高く輝いているのにまだ戻らなかった。祖父は炉端で、向こう脛を真赤にして榾火をつつきながら、何かしきりに、夜更かし勝ちな菊枝のことをぶつぶつ言ったり、自分達の若かった時代の青年男女のことを呟いていた。そして時々思い出したように、どうしても我慢がならねえ……と言うように、菊枝の眠っている部屋の方へ、太いどら声で呼びかけた。

「菊枝! 菊枝! もう、午になってはあ! もう、てえげに起きだらいかべちゃは。」

こう祖父は、幾度となく呼び起こした。けれども、彼女は、すやすやと眠っているらしく、なんとも答えなかった。

彼女が自分自身の時間を惜しむ近頃の癖から、もう一つは口やかましい祖父に対する反感から、眠り果てぬ眠りを装うているのだということは、祖母も母も感付いていた。が、母は、彼女の真実の母でないという遠慮から、彼女を起こしに行くだけの大胆さはなかった。祖母はまた、軒の下や庭に散らばっている塵を掃き蒐めながら、揺り起こしに行こうか、いま揺り起こしに行こうかと思いながらも、また一方では、自分の娘以上に手をかけて育てた子供だけに、ただの一分間でも余計にじっと寝かして置きたいような気がした。

「本当に、今時の娘達は気儘なもんだ。」

祖父はとうとう独り言を始めた。

「夜は夜で、夜業もしねで、教員の試験を受けっとかなんとかぬかして、この夜短かい時に、いつまでも起きてがって、朝は、太陽が小午になっても寝くさってがる。身上だって財産だって、潰れてしまうのあたりめえだ……」

彼女の継母は、祖父のこの呟きを、快く聞き流しながら、背中に小さな子供を不格好に背負い込んで囲炉裏で沢山の握り飯を焼いていた。

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