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TORENDIA

写生文

本文約5,500字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

写生文という手法を用いる作家の心理的状態を論じる。作者は、彼らが持つ独特の人生観を、大人が子供を眺める態度になぞらえて解説する。彼らは対象と同化せず、感情を揺らさず客観的な視点を保ち、滑稽さを含んだ温情ある表現を好む。また、筋の有無にこだわらずパノラマのように情景を描くその姿勢は、俳句から発展した東洋的な特性であると指摘し、その長所と短所を冷静に見つめる必要があると説く。

夏目漱石

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🎧 写生文 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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写生文の存在は近頃ようやく世間から認められたようであるが、写生文の特色についてはまだ誰も明暸に説破したものがおらん。元来存在を認めらるると云う事はすでに認められるだけの特色を有していると云う意味に過ぎんのだから、存在を認められる以上は特色も認められた訳に相違ない。しかし認めらるると云うのは説明されるとは一様でない。桜と海棠の感じに相違のあるのは何人も認めている。その相違を説明しろと云われるとちょっとできにくい。写生文と普通の文章の差違は認められているにもかかわらず明かに道破されておらんのもこの理である。かの写生文を標榜する人々といえども単にわが特色を冥々裡に識別すると云うまでで、明かに指摘したものは今日に至るまで見当らぬようである。虚子、四方太の諸君は折々この点に向って肯綮にあたる議論をされるようであるが、余の見るところではやはり物足らぬ心持がする。余の云う事も諸君から見れば依然として物足らぬかも知れぬ。しかし云わぬより参考になると思う。単に写生文を生命とする諸君の参考になるのみならず、汎く文章に興味を有する人々の耳にはあるいは物珍らしく聞えるかも知れぬ。

写生文と普通の文章との差違を算え来るといろいろある。いろいろあるうちで余のもっとも要点だと考えるにも関らず誰も説き及んだ事のないのは作者の心的状態である。他の点はこの一源泉より流露するのであるから、この源頭に向って工夫を下せば他はことごとく刃を迎えて向うから解決を促がす訳である。

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