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TORENDIA

二人の役人

本文約5,000字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

野原で初茸採りをしていた二人の少年は、東北長官の出遊に備えて栗の実を偽装して撒く二人の役人に遭遇する。少年たちは役人の不手際や珍妙な工作を目の当たりにし、滑稽な状況に困惑しながらもその場を立ち去る。後日、町で役人を見かけるが、彼らは少年たちを思い出さない。権力者の訪問という出来事を軸に、役人たちの滑稽な振る舞いや子供たちの視点から見た大人社会の姿を淡々と描く物語である。

宮沢賢治

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🎧 二人の役人 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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その頃の風穂の野はらは、ほんたうに立派でした。

青い萱や光る茨やけむりのやうな穂を出す草で一ぱい、それにあちこちには栗の木やはんの木の小さな林もありました。

野原は今は練兵場や粟の畑や苗圃などになってそれでも騎兵の馬が光ったり、白いシャツの人が働いたり、汽車で通ってもなかなか奇麗ですけれども、前はまだまだ立派でした。

九月になると私どもは毎日野原に出掛けました。殊に私は藤原慶次郎といっしょに出て行きました。町の方の子供らが出て来るのは日曜日に限ってゐましたから私どもはどんな日でも初蕈や栗をたくさんとりました。ずゐぶん遠くまでも行ったのでしたが日曜には一層遠くまで出掛けました。

ところが、九月の末のある日曜でしたが、朝早く私が慶次郎をさそっていつものやうに野原の入口にかゝりましたら、一本の白い立札がみちばたの栗の木の前に出てゐました。私どもはもう尋常五年生でしたからすらすら読みました。

「本日は東北長官一行の出遊につきこれより中には入るべからず。東北庁」

私はがっかりしてしまひました。慶次郎も顔を赤くして何べんも読み直してゐました。

「困ったねえ、えらい人が来るんだよ。叱られるといけないからもう帰らうか。」私が云ひましたら慶次郎は少し怒って答へました。

「構ふもんか、入らう、入らう。こゝは天子さんのとこでそんな警部や何かのとこぢゃないんだい。ずうっと奥へ行かうよ。」

私もにはかに面白くなりました。

「おい、東北長官といふものを見たいな。どんな顔だらう。」

「鬚もめがねもあるのさ。先頃来た大臣だってさうだ。」

「どこかにかくれて見てようか。」

「見てよう。寺林のとこはどうだい。」

寺林といふのは今は練兵場の北のはじになってゐますが野原の中でいちばん奇麗な所でした。はんのきの林がぐるっと輪になってゐて中にはみじかいやはらかな草がいちめん生えてまるで一つの公園地のやうでした。

私どもはそのはんのきの中にかくれてゐようと思ったのです。

「さうしよう。早く行かないと見つかるぜ。」

「さあ走ってかう。」

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