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TORENDIA

横須賀小景

本文約480字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

カフエでぼんやりした人に出会う場面や、少女の脚の泥がアメリカ大陸に変わる幻想など、横須賀を舞台にした五つの超現実的な断片を集めた芥川龍之介の詩的スケッチ。

芥川龍之介

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🎧 横須賀小景 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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カフエ

僕は或カフエの隅に半熟の卵を食べてゐた。するとぼんやりした人が一人、僕のテエブルに腰をおろした。僕は驚いてその人をながめた。その人は妙にどろりとした、薄い生海苔の洋服を着てゐた。

虹

僕はいつも煤の降る工廠の裏を歩いてゐた。どんより曇つた工廠の空には虹が一すぢ消えかかつてゐた。僕は踵を擡げるやうにし、ちよつとその虹へ鼻をやつて見た。すると――かすかに石油の匂がした。

五分間写真

僕は或晩春の午後、或若い海軍中尉と五分間写真を映しに行つた。写真はすぐに出来上つた。しかし印画に映つたのは大きいといふ羅馬数字だつた。

小さい泥

僕は或十二三のお嬢さんの後ろを歩いて行つた。お嬢さんは空色のフロツクの下に裸の脚を露してゐた。その又脚には小さい泥がたつた一つかすかに乾いてゐた。

僕はこのお嬢さんの脚の上の泥を眺めて行つた。すると泥はいつの間にかアメリカ大陸に変つてゐた。山脈や湖や鉄道も一々はつきり盛り上つてゐた。

僕はおやと思つてお嬢さんを探した。が、お嬢さんは見えなかつた。僕の前には横須賀軍港がひろがり、唯一面に三角の波が立つたり倒れたりしてゐるだけだつた。

――旧稿より――

完

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