本文へ移動
TORENDIA

ニッケルの文鎮

本文約18,500字 ・ 読了時間 約38分

あらすじ(AIが作成しました)

高利貸しの清水から過酷な搾取を受けるある医師の診察所では、二人の書生が住み込みで働いている。ある晩、医師が死去し、現場の文鎮には指紋が残る。清水への疑いが強まる中、二人の書生はそれぞれ独自の視点から矛盾を指摘し、事態は複雑に絡み合っていく。医師の死の真相と、書生たちの正体、そして彼らの間で交わされる思惑を巡る騒動を描く探偵小説である。

甲賀三郎

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 25

ええ、お話しするわ、あたしどうせお喋りだわ。だけど、あんたほんとに誰にも話さないで頂戴。だってあたし、あの人に悪いんですもの。

もう一年になるわね。去年のちょうど今頃、そうセルがそろそろ膚寒くなってコレラ騒ぎが大分下火になった時分よ。去年といえば、随分嫌な年で、新聞には毎日のように、自殺だの人殺しだの発狂だのって、薄気味の悪い事ばかし、それにあんた知ってるでしょう。妙な泥坊の事、ね、そら希代に大きな宅ばかり狙って、どこから入ってどこから出たのやらちっとも分からないのに、いつの間にか金目のものがなくなっていたり、用心すればする程面白がって、思いがけない方法で忍び込んだりして、どこからでも入るからまるでラジオの様だというので、新聞に無電小僧なんて書かれて随分騒ぎだったでしょう。それにとうとうしまいには御恩になった先生があの死に様でしょう。あたしほんとに悲観しちゃったわ。

甲賀三郎の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本