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TORENDIA

恋愛曲線

本文約13,500字 ・ 読了時間 約27分

あらすじ(AIが作成しました)

明日結婚を控える友人へ、医学者である「僕」が記念品として「恋愛曲線」を贈ろうとする書簡。失恋の痛手を負った医学者は、人間の情緒が心臓の鼓動や電気的変化に与える影響を研究する中で、ある悲壮な計画を思いつく。自らの動脈と女性の心臓を繋ぎ、愛の極致を科学的な曲線として記録しようとする執念と、その背後に隠された結婚相手を巡る過去が、刻一刻と失われる血液の中で語られる。

小酒井不木

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親愛なるA君!

君の一代の盛典を祝するために、僕は今、僕の心からなる記念品として、「恋愛曲線」なるものを送ろうとして居る。かような贈り物は、結婚の際は勿論のこと、その他は如何なる場合に於ても、日本は愚か、支那でも、西洋でも、否、世界開闢以来、未だ曾て何人によっても試みられなかったであろうと、僕は大に得意を感ぜざるを得ない。貧乏な一介の医学者たる僕が、たとい己れの全財産を傾けて買った品であっても、百万長者の長男たる君には、決して満足を与え得ないだろうと信じた僕は、熟考に熟考を重ねた結果、この恋愛曲線を思いつき、これならば十二分に君の心を動かすことが出来るだろうと予想して、この手紙を書きながらも、僕は、生れてから始めて経験するほどの、胸の高鳴りを覚えつゝあるのだ。君が結婚しようとする雪江さんは、僕もまんざら知らぬ仲ではないから、君たちの永遠の幸福を祈ってやまぬ僕は、こゝに君に向って恭しく恋愛曲線を捧げ、以て微意を表したいと思うのである。君は、僕のような武骨一点張りの科学者が、恋愛などという文字を使用することにすら、滑稽を覚えるかも知れぬが、然し僕は君の考えて居るほど「冷血」ではなく、多少の温かい血は流れて居るつもりだ。流れて居ればこそ、君の結婚に対して無関心では居られなくなり、頭脳を搾って、縁起のよかるべき名をもった、この贈り物を考え出したのである。

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