TORENDIA
不審庵
太宰治
TORENDIA
不審庵
本文約7,800字 ・ 読了時間 約16分
あらすじ(AIが作成しました)
ある夏、理想主義者である黄村先生から、突然茶会への招待状が届く。茶道とは縁遠い語り手は、失礼があってはならないと茶道の作法書を読み込み、万全の準備を整えて当日を迎える。しかし、会場に到着した語り手と他の出席者が目にしたのは、無鉄砲な茶会によって引き起こされた前代未聞の光景であった。先生の茶道を通じた教訓と、その実行をめぐる騒動を描く。
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拝啓。暑中の御見舞いを兼ね、いささか老生日頃の愚衷など可申述候。老生すこしく思うところ有之、近来ふたたび茶道の稽古にふけり居り候。ふたたび、とは、唐突にしていかにも虚飾の言の如く思召し、れいの御賢明の苦笑など漏し給わんと察せられ候も、何をか隠し申すべき、われ幼少の頃より茶道を好み、実父孫左衛門殿より手ほどきを受け、この道を伝授せらるる事数年に及び申候えども、悲しい哉、わが性鈍にしてその真趣を究る能わず、しかのみならず、わが一挙手一投足はなはだ粗野にして見苦しく、われも実父も共に呆れ、孫左衛門殿逝去の後は、われその道を好むと雖も指南を乞うべき方便を知らず、なおまた身辺に世俗の雑用ようやく繁く、心ならずも次第にこの道より遠ざかり、父祖伝来の茶道具をも、ぽつりぽつりと売払い、いまは全く茶道と絶縁の浅ましき境涯と相成申候ところ、近来すこしく深き所感も有之候まま、まことに数十年振りにて、ひそかに茶道の独習を試み、いささかこの道の妙訣を感得仕り申候ものの如き実情に御座候。
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