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TORENDIA

山男の四月

本文約5,600字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

にしね山のひのき林で山鳥を獲た山男は、木樵の姿に化けて町へ向かう。途中で支那人に出会い、六神丸という薬を勧められて飲むと、体が小さな箱へ変えられ行李に詰め込まれる。箱の中で同じく薬にされた人々から元の姿に戻る方法を聞いた山男は、陳という支那人が子供に同じ手口で薬を飲ませようとする場面に遭遇する。山男は丸薬を飲んで本来の姿に戻り、陳と揉み合いになったところで目を覚ます。それはすべて夢であり、周囲には枯れ草の香りが漂ういつもの森が広がっていた。

宮沢賢治

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🎧 山男の四月 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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山男は、金いろの眼を皿のやうにし、せなかをかがめて、にしね山のひのき林のなかを、兎をねらつてあるいてゐました。

ところが、兎はとれないで、山鳥がとれたのです。

それは山鳥が、びつくりして飛びあがるとこへ、山男が両手をちぢめて、鉄砲だまのやうにからだを投げつけたものですから、山鳥ははんぶん潰れてしまひました。

山男は顔をまつ赤にし、大きな口をにやにやまげてよろこんで、そのぐつたり首を垂れた山鳥を、ぶらぶら振りまはしながら森から出てきました。

そして日あたりのいゝ南向きのかれ芝の上に、いきなり獲物を投げだして、ばさばさの赤い髪毛を指でかきまはしながら、肩を円くしてごろりと寝ころびました。

どこかで小鳥もチツチツと啼き、かれ草のところどころにやさしく咲いたむらさきいろのかたくりの花もゆれました。

山男は仰向けになつて、碧いああをい空をながめました。お日さまは赤と黄金でぶちぶちのやまなしのやう、かれくさのいゝにほひがそこらを流れ、すぐうしろの山脈では、雪がこんこんと白い後光をだしてゐるのでした。

(飴といふものはうまいものだ。天道は飴をうんとこさへてゐるが、なかなかおれにはくれない。)

山男がこんなことをぼんやり考へてゐますと、その澄み切つた碧いそらをふわふわうるんだ雲が、あてもなく東の方へ飛んで行きました。そこで山男は、のどの遠くの方を、ごろごろならしながら、また考へました。

(ぜんたい雲といふものは、風のぐあひで、行つたり来たりぽかつと無くなつてみたり、俄かにまたでてきたりするもんだ。そこで雲助とかういふのだ。)

そのとき山男は、なんだかむやみに足とあたまが軽くなつて、逆さまに空気のなかにうかぶやうな、へんな気もちになりました。もう山男こそ雲助のやうに、風にながされるのか、ひとりでに飛ぶのか、どこといふあてもなく、ふらふらあるいてゐたのです。

(ところがここは七つ森だ。ちやんと七つつ、森がある。松のいつぱい生えてるのもある、坊主で黄いろなのもある。そしてここまで来てみると、おれはまもなく町へ行く。町へはひつて行くとすれば、化けないとなぐり殺される。)

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