ねずみと猫
本文約16,200字 ・ 読了時間 約33分
あらすじ(AIが作成しました)
天井裏で跳梁するねずみに悩まされていた筆者が、駆除を試みる様子を綴る。殺鼠剤や罠を用いた効率的な対策は困難を極め、人間は翻弄される。やがて家族の要望により二匹の子猫を迎え入れることになると、家中のねずみのいたずらはいつしか収束し、天井裏は静寂を取り戻す。本書は、猫の愛らしい日常や成長を記録しながら、人間と動物との間で育まれる穏やかな情愛や、月夜に見せる猫の神秘的な姿を鮮やかに描き出す随筆である。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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一
今の住宅を建てる時に、どうか天井にねずみの入り込まないようにしてもらいたいという事を特に請負人に頼んでおいた。充分に注意しますとは言っていたが、なお工事中にも時々忘れないようにこの点を主張しておいた。大工にも直接に幾度も念をおしておいたが、自分で天井裏を点検するほどの勇気はさすがになかった。
引き移ってから数か月は無事であった。やかましく言ったかいがあったと言って喜んでいた。長い間ねずみとの共同生活に慣れたものが、ねずみの音のしない天井をいただいて寝る事になるとなんだか少し変な気もした。物足りないというのは言い過ぎであろうが、ほんとうに孤独な人間がある場合には同棲のねずみに不思議な親しみを感ずるような事も不可能ではないように思われたりした。
そのうちにどこからともなく、水のもれるようにねずみの侵入がはじまった。一度通路ができてしまえばもうそれきりである。
夜おそく仕事でもしている時に頭の上に忍びやかな足音がしたり、どこかでつつましく物をかじる音がしたりするうちはいいが、寝入りぎわをはげしい物音に驚かされたり、買ったばかりの書物の背皮を無惨に食いむしられたりするようになると少し腹が立って来た。