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TORENDIA

十二支考

本文約91,200字 ・ 読了時間 約183分

あらすじ(AIが作成しました)

十二支の動物にまつわる伝説や習俗を論じる。馬を題材に、唐訳『根本説一切有部毘奈耶』より、瓦師に拾われ王に重用される智馬の物語を紹介する。続いて驢や騾の性質に関する諸国の俗信を挙げ、古今東西の人々が共通して抱く癖や心理に言及する。最後に白馬を尊ぶ慣習の起源を掘り下げ、白馬の節会を青馬と呼ぶ理由を光学的観点や色彩認識の曖昧さから解明する。

南方熊楠

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伝説一

隙行く駒の足早くて午の歳を迎うる今日明日となった。誠や十二支に配られた動物輩いずれ優劣あるべきでないが、附き添うた伝説の多寡に著しい逕庭あり。たとえば羊は今まで日本に多からぬもの故和製の羊譚はほとんど聞かず。猴の話は東洋に少なからねど、欧州に産せぬから彼方の古伝が乏しい。これに反し馬はアジアと欧州の原産、その弟ともいうべき驢はアフリカが本元で、それから世界中大抵の処へ弘まったに因って、その話は算うるに勝えぬほどあるが、馬を題に作った初唄唱う芸妓や、春駒を舞わせて来る物貰い同然、全国新聞雑誌の新年号が馬の話で読者を飽かすはず故、あり触れた和漢の故事を述べてまたその話かと言わるるを虞れ、唐訳の律蔵より尤も目出たい智馬の譚を約説して祝辞に代え、それから意馬の奔るに任せ、意い付き次第に雑言するとしよう。智馬の譚は現存パーリ文の『仏本生譚』にも見えるが、唐訳律中のほど面白からぬようだ。

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