TORENDIA
樹木とその葉
若山牧水
TORENDIA
樹木とその葉
本文約470字 ・ 読了時間 約1分
あらすじ(AIが作成しました)
上野の草津から澤渡へ向かう暮坂峠の山路、拾い集める栗や橡の実、紅葉の景色の中で漂う鷹の鳴き声。朝の梅干しを口にする習慣や、三日間連れ添った草鞋への愛着、地図を広げた枯野での道中、酒を求めて隣村へ使いを出す温泉宿での滞在などを綴る。旅先で出会うささやかな日常の光景や、自然の中を歩き続ける放浪の情緒と、旅路特有の風情や心情をありのままに収める随筆的な歌集。
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🎧 樹木とその葉 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星
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○
乾きたる
落葉のなかに栗の實を
濕りたる
朽葉がしたに橡の實を
とりどりに
拾ふともなく拾ひもちて
今日の山路を越えて來ぬ
長かりしけふの山路
樂しかりしけふの山路
殘りたる紅葉は照りて
餌に餓うる鷹もぞ啼きし
上野の草津の湯より
澤渡の湯に越ゆる路
名も寂し暮坂峠
○
朝ごとに
つまみとりて
いただきつ
ひとつづつ食ふ
くれなゐの
酸ぱき梅干
これ食へば
水にあたらず
濃き露に卷かれずといふ
朝ごとの
ひとつ梅干
ひとつ梅干
○
草鞋よ
お前もいよいよ切れるか
今日
昨日
一昨日
これで三日履いて來た
履上手の私と
出來のいいお前と
二人して越えて來た
山川のあとをしのぶに
捨てられぬおもひもぞする
なつかしきこれの草鞋よ
○
枯草に腰をおろして
取り出す參謀本部
五萬分の一の地圖
見るかぎり續く枯野に
ところどころ立てる枯木の
立枯の楢の木は見ゆ
路は一つ
間違へる事は無き筈
磁石さへよき方をさす
地圖をたたみ
元氣よくマツチ擦るとて
大きなる欠伸をばしつ
○
頼み來し
その酒なしと
この宿の主人言ふなる
破れたる紙幣とりいで
お頼み申す隣村まで
一走り行て買ひ來てよ
その酒の來る待ちがてに
いまいちど入るよ温泉に
壁もなき吹きさらしの湯に
完
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