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TORENDIA

女性の書く本

本文約2,700字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

古い出版年鑑の調査をきっかけに、長年著書の少なかった日本の女性による出版活動が、近年急速に増加している状況を分析する。なぜ今女性の書く本が社会から注目され、出版されるようになったのか、その背景にある社会情勢の変化や読者の心理を考察する。また、単なる流行に留まらず、女性の経験を反映した専門的で質の高い労作が今後より多く生み出されることへの期待を綴る。

宮本百合子

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🎧 女性の書く本 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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小さい年表をこしらえる仕事がきっかけとなって、先頃古い出版年鑑をくりかえして見た。直接には、婦人がどんな文学的労作を出版しているかということを知りたかったのだけれども、年鑑をくってゆくうちに、様々の感想にうたれた。

大体に云って、最近まで、女性が本を出している割合は大変すくない。どの年でも、出版の一番多くの割合を占めて来たのは文学関係であるけれども、その中で女性によって著わされた本の数は実に僅かなもので、年によれば只の一冊もとるに足る書物があらわれていない年さえある。

僅かながら年々絶えず出版されていたのは家事・家政・料理・育児・裁縫・手芸などの本で、それにしろ程度から云うと大体は補習書めいたものが多い。

これらの状態を、ひとめでわかる統計図にして、今日の日本の若い女性たちが眺めたら、彼女たちは自分たちの文化上の実力の伝統について、どんな感懐をもつであろうか。

日本は、知られているとおり出版物の数の多いこと、種類の夥しいことでは、世界でも屈指であった。夥しい良書悪書の氾濫にもかかわらず、女性の著作のしめている場所は、狭く小さく消極的で、波間にやっと頭を出している地味の貧しい小島を思わせる。やっと、やっと、絶え絶えの声を保って来ているのである。

そして、なお興味のあることは、おや、すこし活溌に女性も本を出しているな、とその年を考えてみると、それは何かの意味で日本の社会全体に一種の積極な新文化への翹望のあった年々である。たとえば大正初期であるとか、昭和初期であるとか。

これまで、こんなに女性の著作が少くしかなかったということには、どういう原因があったのだろう。女性全体が、ぐったり無気力で怠慢であったのだろうか。表現すべき何の意欲も感じていなかったのだろうか。社会の気分が女の書いた本なんかに目もくれなかったというわけだったのだろうか。

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