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TORENDIA

家庭と学生

本文約2,400字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

大蔵省の月給振替払い導入など、家計を圧迫する逼迫した家庭の経済状況が学生生活に及ぼす影響を考察する。未来の担い手として尊重された福沢諭吉の時代とは異なり、社会的な視線にさらされ未成年として練成を強いられる現代の学生たちの心理を描く。家庭内の日常の齟齬や意識の変容を具体例とともに論じ、困難な時代状況の中でも、若い男女が家庭生活や自身の生き方という問題から逃避せず、自覚的に明日を創り出すことを訴える。

宮本百合子

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🎧 家庭と学生 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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今日家庭というものを考える私たちの心持は、おのずから多面複雑だと思う。

家庭は今日大事とされている。貯蓄のことも、生めよ、殖せよということも、モラル粛正も、専ら家庭内の実行にかけられている。

昨夜の夕刊には、大蔵省の初の月給振替払いの日のことがのっていた。月給百五十円以上の人々は、現金としては半額しか入っていない月給袋をうけとった。すぐ振替えをとることが出来るのだそうだけれど、私たちは閃くような思いで、うちはどうするのだろう、と考える。先日の新聞には、月給百五十円の人の家計は昨今五十円ずつ足を出して、それは赤字となっていることが報告されていた。私たちはみんな自分の実際でそのことは知っている。だから、それさえも半額ときくと、無関心でないのだと思う。

段々民間にもその方法を試みると語られていて、その方法がひろく行われれば行われるほど家庭はどうやってゆくのだろうという思いがひろがるのではなかろうかと思った。民間のいろいろの業者・経営者にとって、月給はともかく現金では半額だけ手わたせばいいということは、不便な方法ではなかろう。悪質の支払主は、そこに相当の才覚と無恥とをくりひろげることは火を見るよりも明らかなのだから。そうしたら、うちはどうしてやって行くのだろう。

学生の生活にも、そういう世間の動きは直接間接に響いているわけと思う。その面からだけでも、家庭と学生生活とのいきさつは、そうそう暢気に行ってもいないのが現実であろう。家庭の間で、学校へ行っている若者たちに対する大人の感情がどんなに変って来ているかというような点も相当微妙だろうと思う。学生を未来の担い手として愛し感じている風潮であるか、それとも、学生は未成人であるという面を強調して観られてゆくかということでは、人生の光彩が大分違って来る。

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