新しい卒業生の皆さんへ
本文約5,200字 ・ 読了時間 約11分
あらすじ(AIが作成しました)
卒業を迎え、新たな人生の門出に立つ若い女性たちへ向けた手紙。親世代の古い価値観や日本の社会状況、戦争の記憶といった現実の困難を綴る。歴史は繰り返すという言葉に抗い、自身の運命の主人として強く生きるために、社会の仕組みや労働について主体的に考え、学問や計画性を持って未来を切り拓く重要性を論じる。
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きょう、この会に出席して、みなさまにお目にかかれないのを、ほんとうに残念に思います。去年の秋、過労して健康をわるくしてから、おはなしができないで、ずいぶんあちこちの学校からの御希望に添えませんでした。そういう学校からの方たちも、あるいは、新しい卒業生としてきょうの会に御出席かもしれません。それを思うと、一層ひとこと御挨拶をしたい心持がして、これをかいております。
みなさまはこの数日来、卒業し、送別会、上級学校の新入生としての歓迎会と、若々しい人生の一つの門から他の門へとおくぐりになりました。その間に、いろいろのことをお感じになっていることと思います。そのさまざまな感じのなかで、きょうに生きる若い女性として一番痛切に感じていらっしゃることは何でしょうか。
専門学校を卒業したかたは、それぞれ就職のために忙しい日を送られたでしょう。就職しない方の気持にはどんな思いがあるでしょうか。この間から、わたくしはたびたびこういう不安をききました。やっと家のものを説得して専門学校は出たけれども、出てから先の生活を考えると、何ともいえない心持がして来る、だって、その先にある生活は、もう大体わかっているんですもの、と。そういう述懐をもっている方は、きょうの会に来ていらっしゃる方々の中に一人もないでしょうか。女学校を卒業する人からの手紙で、一番心痛の種になっていることは、もっと何か勉強したい自分の心と、お嫁入りということだけを先に見ていて、洋裁でも稽古していればそれで十分だと考える親たちとの意見のくいちがいです。この二つの悩みのどっちをとってみても、きょうの若い女性がどんなにゆたかな進歩した人生を欲しているかという事実と、反対に、日本の社会の現実はまだなかなか若々しくどこまでも伸びようとする女性のねがいの枝を撓める状態におかれているという現実を語っていると思います。