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TORENDIA

かけはしの記

本文約6,000字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

病に苦しむ作者が、木曾路を旅し都を離れて山野を巡る様子を綴る。絶壁が聳え雲霧が立ち込める難所や、古戦場跡、茶屋での人々の触れ合い、そして激流を下る舟旅を経て、木曾の風景や歴史を辿る。道中で詠んだ数々の俳句や歌を交えながら、旅の苦労と慰め、そして旅の終わりをユーモラスに描写する。

正岡子規

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🎧 かけはしの記 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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浮世の病ひ頭に上りては哲学の研究も惑病同源の理を示さず。行脚雲水の望みに心空になりては俗界の草根木皮、画にかいた白雲青山ほどにきかぬもあさまし。腰を屈めての辛苦艱難も世を逃れての自由気儘も固より同じ煩悩の意馬心猿と知らぬが仏の御力を杖にたのみていろ/\と病の足もと覚束なく草鞋の緒も結びあへでいそぎ都を立ちいでぬ。

五月雨に菅の笠ぬぐ別れ哉

知己の諸子はなむけの詩文たまはる。

ほととぎすみ山にこもる声きゝて木曾のかけはしうちわたるらん   伽羅生 卯の花を雪と見てこよ木曾の旅   古白 山路をり/\悲しかるへき五月哉  同  又碧梧桐子の文に

日と雨を菅笠の一重に担ひ山と川を竹杖の一端にひつさげ木賃を宿とし馬子を友とし浮世の塵をはなれて仙人の二の舞をまねられ単身岐蘇路を過ぎて焦れ恋ふ故郷へ旅立ちさるゝよし嬉しきやうにてうれしからず悲しきやうにて悲しからず。願はくは足を強くし顔を焦して昔の我君にはあらざりけりと故郷人にいはれ給はん事を。山ものいはず川語らず。こゝに贐の文を奉りて御首途を送りまゐらす。

五月雨や木曾は一段の碓氷嶽   碧梧桐

上野より汽車にて横川に行く。馬車笛吹嶺を渉る。鳥の声耳元に落ちて見あぐれば千仭の絶壁、百尺の老樹、聳え/\て天も高からず。樵夫の歌、足もとに起つて見下せば蔦かづらを[#「蔦かづらを」は底本では「蔦かづちを」]伝ひて渡るべき谷間に腥き風颯と吹きどよめきて万山自ら震動す。遙かにこしかたを見かへるに山又山峩々として路いづくにかある。寸馬豆人のみぞ、かれかと許り疑はれて、

つゝら折幾重の峯をわたりきて雲間にひくき山もとの里

日もやゝ暮れかゝれば四方濛々として山とも知らず海とも知らず。かけ上る駒の蹄に踏み散らす雲霧のあはひを見れば一歩の外己に削りたてたる嶮崖の底もかすかなることおそろし。登れども登れども極まる処を知らず。山ます/\高く雲いよ/\低し。

見あぐれば信濃につゞく若葉哉

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