本文へ移動
TORENDIA

『心』自序

本文約470字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

連載中に一篇にまとまりきらないと気づき「先生の遺書」だけを単行本にまとめた経緯と、初めて自ら装幀を手がけた「心」の成り立ちを語る夏目漱石の自序。

夏目漱石

速度
🎧 『心』自序 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

『心』は大正三年四月から八月にわたつて東京大阪両朝日へ同時に掲載された小説である。

当時の予告には数種の短篇を合してそれに『心』といふ標題を冠らせる積だと読者に断わつたのであるが、其短篇の第一に当る『先生の遺書』を書き込んで行くうちに、予想通り早く片が付かない事を発見したので、とう/\その一篇丈を単行本に纏めて公けにする方針に模様がへをした。

然し此『先生の遺書』も自から独立したやうな又関係の深いやうな三個の姉妹篇から組み立てられてゐる以上、私はそれを『先生と私』、『両親と私』、『先生と遺書』とに区別して、全体に『心』といふ見出しを付けても差支ないやうに思つたので、題は元の儘にして置いた。たゞ中味を上中下に仕切つた丈が、新聞に出た時との相違である。

装幀の事は今迄専門家にばかり依頼してゐたのだが、今度はふとした動機から自分で遣つて見る気になつて、箱、表紙、見返し、扉及び奥附の模様及び題字、朱印、検印ともに、悉く自分で考案して自分で描いた。

木版の刻は伊上凡骨氏を煩はした。夫から校正には岩波茂雄君の手を借りた。両君の好意を感謝する。

大正三年九月

完

夏目漱石の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本