二十三番地
本文約13,400字 ・ 読了時間 約27分
あらすじ(AIが作成しました)
裏の家に新しい住人としてかつて隣人だった孝ちゃん一家が越して来る。一家の主人は鶏を飼い、夜な夜な騒がしい宴会を開くなど常識を欠いた振る舞いを繰り返す。作者は酒に溺れ、幼い子供を巻き込んで無軌道な生活を送るその家族の姿を通し、子供の教育を軽んじ、ひどい誤った価値観を植え付ける親の無責任な在り方を静かに告発する。やがて一家は静かに去り、空家となった住居の荒れた跡地に作者は物思いに耽る。
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暫く明いて居た裏の家へ到々人が来て仕舞った。
子供達の遊び場になって居る広っぱに面して建って居る家だから、別にどうと云う程の事もなさそうなものだけれ共、やっぱり有難迷惑な、聞きたくもない兄弟喧嘩の泣声をきかされたり、うっかり垣根際に寄る事も遠慮しなけりゃあならないしするから、裏が明いて居た内は家中の者がのうのうとして居た。
場末の御かげでかなり広い地所を取って、めったに引越し騒ぎなんかしない家が続いて居るので、ポツッと間にはさまった斯う云う家が余計五月蠅がられたり何かして居るのである。
貸すための家に出来て居るんだから人が借りるのに無理が有ろう筈もないけれども、なろう事ならあんまり下司張った家族が来ません様にと願って居る。
前に居た人達は、相当に教養があるもんだから、静かな落付きのある生活をして居たが、いつだったか奥さんのうかつで、這い初めの子が気発油をのんで死んだ事を新聞に出されたので、厭気が差したと見えて越して行ってしまった。
何でも学士だったとかで、そう云えばかなりな書籍なども置いてあった様だ。
「今度来たのはどんな人なんだろうねえ。
と云い合って居ると、男の子がいつの間にか偵察をして来て、
「孝ちゃんの家が又来た。
と報告した。
「孝ちゃんの家が?
まあそうなの、又来たの。
じゃああの小っちゃな女の子も居るの、
いやな顔をした親父さんも。
「うん、
何だか赤坊が二人ばかり殖えた様だ。
「まあそうかい。
一寸母様、孝ちゃんの家が来たんですってさ、
ほんとに可笑しいわ。
一体どうしたってんだろう。
私は一年程前まで居た「孝ちゃんの家」にくっついて居る種々な話を思い出して笑わずには居られなかった。
何でも夏だったと覚えて居る。
主人は勤めに、子供達は学校に行ってしまって静かになって居た孝ちゃんの家が急に大騒ぎになった。
何だか彼んだか訳の分らない事を二色の金切声が叫びながら、ドッタンバッタンと云うすさまじさなので、水口で何かして居た女中達は皆足音をしのばせて垣根の隙――生垣だから不要心な位隙だらけになって居る――からのぞくと、これはこれはまあ何と云う事だろう。
奥さんと、女中が啀み合いの最中なのであった。