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TORENDIA

二月七日

本文約3,900字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

重い肺炎の疑いで高熱が続く幼い弟を抱える寿江子は、母と共に懸命な看病を続ける。家事の担い手が不足する中、彼女は慣れない台所仕事や雑用を一身に引き受け、疲れ果てながらも責任感を胸に走り回る。やがて弟の熱が下がり、家中に安堵の空気が漂うが、極限まで張り詰めていた寿江子の体と心には、静かな疲労と喪失感が重くのしかかる。一家に訪れた束の間の休息と、その裏にある家族の絆の強さを描く作品。

宮本百合子

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🎧 二月七日 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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彼女は耳元で激しく泣き立てる小さい妹の声で夢も見ない様な深い眠りから、丁度玉葱の皮を剥く様に、一皮ずつ同じ厚さで目覚まされて行きました。

習慣的に夜着から手を出して赤い掛布団の上をホトホトと叩きつけてやりながらも、ぬくもい気持で持ち上げた頭をフラフラと夢心地で揺り未だ寝て居たい気持と、皆困って居るのだからもう起きてやりましょうと思う心とが罪のない争闘を起し始めたのを感じて居ました。

自分が寝せつけられて居る様な音調で彼女は子守唄を唄いました。

お家の可愛いお宝ちゃん

お寝み遊ばせお静かに……!

彼女がその時々勝手な言葉をつけて細い声で唄う歌は暫くの間子供を静かにさせましたけれ共、その次ほんとうに火の付いた様に「イヤー」と云いながら上げた泣き声はすっかり合おう合おうとして居た瞼を見開かせて彼女は五つ六つの子の様に手の甲で目をこすりこすりベルを鳴らして女中を呼びました。

「おやおっきでございますか寿江子様。

女は愛素よく子供の足元にある乳を暖めてやりながら、雪が積る程降って居る事、英男の工合の大変好い事を告げて、

「お嬢様もっとお寝みなさいませよ、

まだ九時でございます。

と云います。

生返事をしながら彼女は足の踵がどことなし痛い事、頭の奥がはっきりしない事を思って居ました。

今年九つになって可愛い利口な弟の英男はこの月始めから高い熱を出して床に就いて居るのです。

肺炎だろうと云う人もありインフルエンザだと云う人もあるのですけれ共臆病になって居る家の者達は、皆それ等の病名に安心しないので――そうではないと思って居たいので――一週間高熱の続いた事は何病とは明かに云われて居ないのです。

熱の高低が激しくて看護婦のつける温度表には随分激しい山がたが描かれて居るので彼女と両親は夜も寝ないで心配を仕つづけて来ました。

大柄だと云ってもまだやっと満七つと幾月と云う体なのですものそこへ三つも氷嚢をあてて胸に大きな湿布を巻き付けられながら西洋人の様に聰明らしく大きな目で白い壁の天井をマジマジと眺め、

「お母様、顔があつい、

病気してつまらないわねえ。

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