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TORENDIA

最古日本の女性生活の根柢

本文約9,100字 ・ 読了時間 約19分

あらすじ(AIが作成しました)

古代史の記述や伝承、万葉集の分析を通じて、日本古代における女性の生活と宗教的役割を論じる。当時の女性は生涯や一定期間、巫女として神事に携わり、村々の君主と密接に関係していたことを指摘する。また、巫女の結婚における貞操観念や、新嘗祭の夜に女性のみが神と相対する「女の家」という概念について、沖縄の民間伝承や東歌を根拠に、日本民族の精神生活の根底にあった女性の神聖な立ち位置を明らかにする。

折口信夫

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一 万葉びと――琉球人

古代の歴史は、事実の記憶から編み出されたものではない。神人に神憑りした神の、物語つた叙事詩から生れて来たのである。謂はゞ夢語りとも言ふべき部分の多い伝への、世を経て後、筆録せられたものに過ぎない。日本の歴史は、語部と言はれた、村々国々の神の物語を伝誦する職業団体の人々の口頭に、久しく保存せられて居た律文が、最初の形であつた。此を散文化して、文字に記したのが、古事記・日本紀其他の書物に残る古代史なのである。だから成立の始めから、宗教に関係して居る。神々の色彩を持たない事実などの、後世に伝はりやうはあるべき筈がないのだ。並みの女のやうに見えて居る女性の伝説も、よく見て行くと、きつと皆神事に与つた女性の、神事以外の生活をとり扱うて居るのであつた。事実に於て、我々が溯れる限りの古代に実在した女性の生活は、一生涯或はある期間は、必巫女として費されて来たものと見てよい。して見れば、古代史に見えた女性の事蹟に、宗教の匂ひの豊かな理由も知れる事である。女として神事に与らなかつた者はなく、神事に関係せなかつた女の身の上が、物語の上に伝誦せられる訣がなかつたのである。

私は所謂有史以後奈良朝以前の日本人を、万葉人と言ひ慣して来た。万葉集は略、日本民族が国家意識を出しかけた時代から、其観念の確立した頃までの人々の内生活の記録とも見るべきものである。此期間の人々を、精神生活の方面から見た時の呼び名として、恰好なものと信じて居る。古事記・日本紀・風土記の記述は、万葉人の生活並びに、若干は、其以前の時代の外生活に触れて居る。茲に万葉集を註釈とし、更に今一つ生きた註釈を利用する便宜が与へられて居る。

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