TORENDIA
環礁
中島敦
TORENDIA
環礁
本文約35,900字 ・ 読了時間 約72分
あらすじ(AIが作成しました)
南洋の孤島を訪れた語り手は、子供が一人しか存在しない島の衰退を目の当たりにする。子供が絶え、人口が急速に減少する中で、住民は最後の子供を神聖視し、恐れを抱きながら生活している。語り手は、滅びゆく島の運命と、そこに残される静かな風景や人々の日常を静かに観察する。本作は、科学的な解明を超えた生命の終焉と、その後に訪れる無人の島を予感させる異国の地の情景を綴る紀行文である。
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寂しい島
寂しい島だ。
島の中央にタロ芋田が整然と作られ、その周圍を蛸樹やレモンや麺麭樹やウカル等の雜木の防風木が取卷いてゐる。その、もう一つ外側に椰子林が續き、さてそれからは、白い砂濱――海――珊瑚礁といつた順序になる。美しいけれども、寂しい島だ。
島民の家は西岸の椰子林の間に散らばつてゐる。人口は百七八十もあらうか。もつと小さい島を幾つも私は見て來た。全島珊瑚の屑ばかりで土が無いために、全然タロ芋(之が島民にとつての米に當るのだ)の出來ない島も知つてゐる。蟲害のために悉く椰子を枯らして了つた荒涼たる島も知つてゐる。それだのに、人口僅か十六人のB島を別にすれば、此處程寂しい島は無い。何故だらう? 理由は、たゞ一つ。子供がゐないからだ。