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TORENDIA

獄中への手紙

本文約284,200字 ・ 読了時間 約569分

あらすじ(AIが作成しました)

巣鴨拘置所に収監中の夫・顕治へ宛てた一月二日の手紙。目白の自宅で過ごす正月二日の様子を綴る。炭の到着を喜び、手伝いの女性との生活や、元旦に佐藤夫妻らと銀座へ出かけた出来事を語る。また、同僚と友人の境界、文学における人間性の追求など、日々の生活の中での思索を率直に記し、当時の社会状況や個人の心情を交えながら、離れて暮らす夫へ自身の日常を詳細に伝える書簡である。

宮本百合子

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一月二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

一月二日  第一信

さて、あけましておめでとう。除夜の橿原神宮の太鼓というのをおききになりましたか? 私たち(この内容は後出)は銀座からすきや橋に向って来た左角にある寿司栄の中でききました。

おだやかに暖い暮でしたが、正月になったら、きのうは風、きょうは又大層寒いこと。私は羽織を二枚着て居る有様です。

ずっとお元気? かぜは? 私のズコズコも悪化しない代り少々万年で。でも、実に吉報があります。それはね、島田から送って下すった炭が十俵無事三十日夜到着。私どもはワーッというよろこびかたで、もうこれで正月になった、という次第でした。うれしいでしょう、何てうれしいのでしょう。ですからきっと私のズコズコもなおるでしょう。佐藤さんのところでお年よりもいられて炭なしに閉口故、一俵あげました。佐藤さんフロシキを頭からかぶってかついで行った。この頃の良人にはこんな役もふえて来て居ります。

いろんなことが押しつまってあってね、三十日にフヂエが無断帰還を敢行、つまり逃げました。可笑しいでしょう? 二十八日の夜中会から速達が来ました。二十九日目をさまして何かときいたら、おふくろさんがかぜをひいたからかえってくれと云って来た由。東京で三十、三十一日はどんな日だか分っているのだから、私はおこってね、正月二日にかえっていいから三十日三十一日はいてくれなければ困ると云ったら(ことをわけて云ったから)何とも尤もで、では一寸かえってそのことを云って来ますというわけで、私はそのまま外出。タカちゃんに晩かえりますと云って出ました。私は図書館へ開いていたらゆくつもり。そしたら二十六日に終っている。がっかりして午後早くかえって来て、二人で夕飯たべて、さて十時頃になって、どうしたろうと戸棚みたら包ナシ。ハハアと大笑いしたり、ふんがいしたり派出婦根性をおどろいたり。

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