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TORENDIA

人間繁栄

本文約18,900字 ・ 読了時間 約38分

あらすじ(AIが作成しました)

四十歳になる津田洋造は、五人の妻との間に十三人の子供を設けている。自身の健康に不安を覚え、子供たち全員を顔合わせさせたいと妻の八重子に持ちかけるが、八重子は激しい拒絶反応を示す。子宝に恵まれない苦悩を吐露する八重子に対し、洋造は困惑しながらも、自身の生活や家族の在り方を顧みる。五人の妻や子供たちの家を巡り歩き、大家族を抱える自らの生活を噛みしめながら、洋造は父としての複雑な心境を抱えていく。

豊島与志雄

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津田洋造[#「洋造」は底本では「洋蔵」]は、長男が生れた時、その命名に可なり苦しんで、いろいろ考え悩んだ末、一郎と最も簡単に名づけてしまった。長女が生れた時も、やはり同様にして、丁度春だったので、春子と最も簡単に名づけた。そして、それが結局好都合となった。彼は男の子が出来る毎に、二郎、三郎、四郎……と順々に名づけていった。九郎まできたら、此度は自分の名前を一字冠して、洋一郎、洋二郎……としてゆくつもりだった。女の子に対しては、生れた時の季節や花の名などをつけることにした。そして今、四十歳にして彼は、男の子が一郎から八郎まで八人、女の子が春子、冬子、梅子、秋子、桃子の五人、合計十三人の父親だった。

十三人というからには、勿論母親は一人ではなかった。皆合して五人いた。

男一人に女五人、そして子供十三人、これなら充分一家繁栄で、目出度くなくもない……と津田洋造は考えた。そして自分が四十歳になったのを機会に、皆一堂に会してみたらと思って、妻の八重子に云ってみた。

「俺はもう四十になったのだから、体力の方から云えば、一生の盛りを越して、これから次第に衰えるかも知れないし、それよりも先ず第一に、酒の量が多いから、脳溢血だの脳貧血だの、そんな風な病気で、いつころりといってしまうかも分らない。だから、今のうちに、四十になったのを機会に、一度皆一緒に……お前が知ってる通り、丁度十三人の子供があって、互に会ったこともないのがあるから、一緒に集ってみたらと思うんだがね、どうだろう。一つ賑かに、園遊会みたいなことをやってもいいし、何処かへ出かけていってもいいし、兎に角皆の顔合せだけを、何とかしてみたいと思うんだがね……。」

八重子は長火鉢の前に、人形のように坐っていたが、眉根をぴくりとさした。

「そして、母親達も一緒でございますか。」

「そうさね、乳飲児や小さいのがあるから、子供ばかりというわけにもゆくまい。」

「それでは私だけ欠席さして頂きます。家の子はもう私が参らないでも大丈夫ですから。」

「それは困るよ。欠席とか出席とかそんな問題じゃないんだ。お前が俺の妻として、会の中心になってくれなくちゃあ……。」

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