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TORENDIA

梅花の気品

本文約2,400字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

梅花の気品は、香りと気魄、そして純白の色彩と老木と若枝が調和した樹の姿に宿る。この作品は、芳香、凛乎たる気魄、清浄なる色彩、そして老若を包み込む樹の姿という四つの観点から、梅花が持つ独特の気品について論じる。自然の風趣が残る静かな環境で梅花と対峙し、その気高さを心に浸透させることこそが、地上の人々の魂に天上の息吹をもたらす真の観賞の境地であると綴る。

豊島与志雄

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🎧 梅花の気品 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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梅花の感じは、気品の感じである。

気品は一の芳香である。眼にも見えず、耳にも聞えない、或る風格から発する香である。甘くも酸くも辛くもなく、それらのあらゆる刺戟を超越した、得も云えぬ香である。人をして思わず鼻孔をふくらませる、無味無臭の香である。それと明かに捉え得ないが、それと明かに感じ識らるる、一種独特の香である。何処からともなく、何故にともなく、何処へともなく、自からに発散して漂っている、浮遊の香である。

それはまた、梅花の香である、薄すらと霧こめた未明の微光に、或は淋しい冬日の明るみに、或は佗びしい夕の靄に、或は冷々とした夜気に、仄かに織り込まれて、捉え難く触れ難く、ただ脈々と漂ってる、一種独特の梅花の香は、俗塵を絶した気品の香である。その香を感じてその花を求むるは、俗であり愚である。花の在処を求めずに、漂い来る芳香に心を澄す時、人は気品の本体を識るであろう。

気品はまた、一の凛乎たる気魄である。衆に媚びず、孤独を恐れず、自己の力によって自ら立ち、驕らず卑下せず、霜雪の寒にも自若として、己自身に微笑みかくる、揺ぎなき気魄である。肥大ならず、矮小ならず、膨張せず、萎縮せず、賑かからず、淋しからず、ただあるがままに満ち足って、空疎を知らず、漲溢を知らず、恐るることなく、蔑むことなき、清爽たる気魄である。

それはまた、梅花の気魄である。霜雪の寒さを凌ぎ、自らの力で花を開き、春に魁けして微笑み、而も驕ることなく、卑下することなく、爛漫たる賑かさもなく、荒凉たる淋しさもなく、ただ静に己の分を守って、寒空に芳香を漂わしてる姿は、まさに気品そのものの気魄である。しみじみと梅花に見入る時、恐怖や蔑視や悲哀や歓喜など、凡て心を乱すが如き情は静まって、ただ気高き気品の気魄に、人は自ら打たるるであろう。

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