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TORENDIA

手品師

本文約5,500字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

昔ペルシャに暮らす貧しい手品師ハムーチャは、旅人から北の山奥に住むマージが授ける不思議な術の噂を聞く。彼は命がけで険しい旅路を越え、七年間の過酷な修行の末に、不用な物を煙に変える術を習得する。世に戻った彼は、その術で人々を驚かせ名声と富を得るが、ついには観衆の要求に応じ、自身の持ち物だけでなく自らの身体までも煙に変えて消え去ってしまう。

豊島与志雄

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🎧 手品師 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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一

昔ペルシャの国に、ハムーチャという手品師がいました。妻も子もない一人者で、村や町をめぐり歩いて、広場に毛布を敷き、その上でいろんな手品を使い、いくらかのお金をもらって、その日その日を暮らしていました。赤と白とのだんだらの服をつけ三角の帽子をかぶって、十二本のナイフを両手で使い分けたり、逆立ちして両足で金の毬を手玉に取ったり、鼻の上に長い棒を立ててその上で皿廻しをしたり、飛び上がりながらくるくるととんぼ返りをしたり、その他いろいろなおもしろい芸をしましたので、あたりに立ち並んでる見物人から、たくさんのお金が毛布の上に投げられました。けれどもハムーチャは、そのお金で酒ばかり飲んでいましたので、いつもひどく貧乏でした。「ああああ、いつになったら、お金がたまることだろう」と嘆息しながらも、ありったけのお金を酒の代にしてしまいました。雨が降って手品が出来ないと、水ばかり飲んでいました。そしてだんだん世の中がつまらなくなりました。

ある日の夕方、ハムーチャは長い街道を歩き疲れて、ぼんやり道ばたに屈み込みました。すると、遠くから来たらしい一人の旅人が通りかかりました。旅人はハムーチャのようすをじろじろ見ていましたが、ふいに立ち止まってたずねました。

「お前さんは奇妙な服装をしているが、一体何をする人かね」

「私ですか」とハムーチャは答えました。「私は手品師ですよ」

「ほほう、どんな手品を使うか一つ見せてもらいたいものだね」

そこでハムーチャは、いくらかの金をもらって、早速得意な手品を使ってみせました。

「なるほど」と旅人は言いました、「お前さんはなかなか器用だ。だが私は、お前さんよりもっと不思議な手品を使う人の話を聞いたことがある。世界にただ一人きりという世にも不思議な手品師だ」

「へえー、どんな手品師ですか」

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