孤独者の愛
本文約8,700字 ・ 読了時間 約18分
あらすじ(AIが作成しました)
内気で孤独を抱える証券会社員の男と、男嫌いと噂される小料理屋の女中・澄江は、互いに引き寄せられ愛し合うようになる。家庭生活への怖れや周囲との軋轢に悩み、離婚を恐れる澄江との関係に葛藤しながらも、二人は深く結びついていく。やがて追い詰められたように感じていた澄江の姿を追い、自らの孤独を重ね合わせた男は、彼女と再会を果たす。二人は現状を離れる決意を固め、共に新たな場所を目指して汽車に乗り込む。
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男嫌いだと言われる女もあれば、女嫌いだと言われる男もある。女嫌いの男に対して、天下の女性はどういう感じを持っておられるか、私は知らない。だが、男嫌いの女に対して、男の方では妙に気を惹かれるものだ。
男嫌いの女が、甚だ醜く、その醜さのために男から顧みられず、復讐的な気持ちから男嫌いになったのだとすれば、これに同情するしないは各人の御自由として、私から見れば、どうも浅間しくてお話にならない。男嫌いの女はまあ十人並の容姿であってほしく、美しければ美しいほどよい。
そのひとが、なぜ男嫌いになったのか。なにか淋しい薄倖な生れつきなのであろうか。悲しい星の下に生れたのであろうか。或いは、心に深い痛手でも受けてるのであろうか。あまり多くの涙を流しすぎたのであろうか。或いは、高遠な理想、とまではいかなくとも、清純すぎるほどの情操を、胸の奥に秘めてるのであろうか。世の中のこと、男女のこと、すべてが醜くきたなく見えるのであろうか。或いは、あまりに心やさしく、内気なはにかみやで、自分一人だけの世界にとじこもってるのであろうか。
そういうことが、私の感傷を甘やかすのである。言い換えれば、私の男心をそそのかすのである。男嫌いということを、決定的な、本質的なものだとは、誰も思わないであろう。すべての男が嫌いだ、といっても、この私だけは、そのすべての男の中には含まれていず、もしかすると彼女が心を寄せかけてくる唯一人であるかも知れないとの、自惚れた希望がある。すべての男というのが完全にすべてであればあるほど、そのすべてから除外される私一人が、輝かしいものとなる。だから、男嫌いな女と聞いて、内心にやりとするほど下卑たのは論外として、たいていの者は、心のどこかに頬笑みかけられるような思いをする。あなただってそうでしょう。なにも隠すことはない。実は、私もそうだった。
さりとて、私は女にかけて図々しい男では決してない。仲間たちからは、むしろ、女嫌いだとされていた。ところが、私のこの女嫌いは、孤独な心根からきたものなのだ。