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TORENDIA

風博士

本文約5,400字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

東京の邸宅に住む偉大なる風博士は、自らの研究と論敵である蛸博士への憎悪を綴った遺書を残し、姿を消す。博士の愛弟子である語り手は、かつて自身の結婚式当日に博士が突然消え失せ、風となった瞬間を目撃したと主張する。本作は、博士が抱く蛸博士への異常な敵対心や、その消失の経緯を語り手が振り返り、博士が風となったという不可解な事実を提示して読者に信じるよう迫る物語である。

坂口安吾

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🎧 風博士 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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諸君は、東京市某区某町某番地なる風博士の邸宅を御存じであらう乎? 御存じない。それは大変残念である。そして諸君は偉大なる風博士を御存知であらうか? 御存知ない。それは大変残念である。では偉大なる風博士が自殺したことも御存じないであらうか? ない。嗚乎。では諸君は遺書だけが発見されて、偉大なる風博士自体は杳として紛失したことも御存知ないであらうか? ない。嗟乎。では諸君は僕が其筋の嫌疑のために並々ならぬ困難を感じてゐることも御存知ないのであらうか? 於戯。では諸君は僕が偉大なる風博士の愛弟子であつたことも御存じあるまい。しかし警察は知つてゐたのである。そして其筋の計算に由れば、偉大なる風博士は僕と共謀のうへ遺書を捏造して自殺を装ひ、かくてかの憎むべき蛸博士の名誉毀損をたくらんだに相違あるまいと睨んだのである。諸君、これは明らかに誤解である。何となれば偉大なる風博士は自殺したからである。果して自殺した乎? 然り、偉大なる風博士は紛失したのである。諸君は軽率に真理を疑つていいのであらうか? なぜならそれは、諸君の生涯に様々な不運を齎らすに相違ないからである。真理は信ぜらるべき性質のものであるから、諸君は偉大なる風博士の死を信じなければならない。そして諸君は、かの憎むべき蛸博士の――あ、諸君はかの憎むべき蛸博士を御存知であらうか? 御存じない。噫吁、それは大変残念である。では諸君は、まづ悲痛なる風博士の遺書を一読しなければなるまい。

風博士の遺書

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