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TORENDIA

我が人生観

本文約9,500字 ・ 読了時間 約20分

あらすじ(AIが作成しました)

箱根の温泉で捕物帳を執筆する著者は、早川の洪水や戦時中に取り組んだ黄河に関する調査を通じ、自然の猛威と人間の力について考察する。これらを背景に、金閣寺焼失を巡る世間の反応や既存の美学を批判し、文化の本質を過去の遺跡の保存ではなく、自然を征服し生活を向上させる未来志向の建設に置くべきだと論じる。あわせて、国全体の防災や発電といった実効性ある事業の推進を主張する。

坂口安吾

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小生もついに別荘の七ツ八ツ風光明媚なるところにブッたてようという遠大千万なコンタンによって「捕物帳」をかくことゝなり、小説新潮の案内で、箱根の谷のドン底の温泉旅館へ行った。

このへんは谷川といっても川の趣きではなくて、流れの全部が段をなした瀑布であり、四方にはホンモノの数百尺の飛瀑も落下している。音があると思う人には、これぐらいウルサクて頭痛の種のところもないかも知れないが、無神経の私には、こんなに音のないところはなかった。隣の話声も、帳場のラジオも、宴会室のドンチャン騒ぎも、蝉の声も、一切合財、きこえない。女中が唐紙をあけてはいってくるのが、跫音も、唐紙をあける音もきこえないから、忽然として、女中が現れている。忍術の要領である。文明国のどこを探しても、こんなに物音のないところはないのである。私はラジオの音が何より仕事の邪魔だが、ここではその心配が完全にない。大そう私向きの旅館であった。その代り、殺人事件があっても、きこえない。ここで捕物帳を書いていると、そういうことを時々考えてゾクゾクすることもあり、おのずから捕物帳の心境となって、探偵気分横溢しすぎるキライがないでもない。

この旅館の庭は、何百貫という無数の大石で原形なく叩きつぶされている。アイオン颱風というもののイタズラである。

私はこの川が海にそそぐところの、小田原市早川口というところの堤の下で洪水に見舞われたことがあるが、利根川の洪水とは、趣きが違う。利根川の洪水は、大陸的に漫々的で、巨人的であり、死神の国の茫々たる妖相にみちて静寂であるが、早川の洪水は違う。こんなウルサイ洪水はない。

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