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TORENDIA

格さんと食慾

本文約600字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

宇野浩二の人物像と彼に対する筆者の独特な観察を綴る。聡明かつ多感であり、喜劇的精神を兼ね備える一方で、滅多に感情を露わにしないというその特異な性質を考察する。また、本名である格二郎という名から連想される風貌について触れ、三味線を弾く姿を格さんと形容する。さらに、その容貌から受ける印象を比喩的に捉え、食欲を想起させるような遊び心ある表現を用いて、一風変わった人物評を展開する。

芥川龍之介

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🎧 格さんと食慾 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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宇野浩二は聡明の人である。同時に又多感の人である。尤も本来の喜劇的精神は人を欺くことがあるかも知れない。が、己を欺くことは極めて稀にしかない人である。

のみならず、又宇野浩二は喜劇的精神を発揮しないにもしろ、あらゆる多感と聡明とを二つとも兼ね具えた人のように滅多にムキにはならない人である。喜劇的精神を発揮することそのことにもムキにはならない人である。これは時には宇野浩二に怪物の看を与えるかも知れない。しかし其処に独特のシャルム――たとえば精神的カメレオンに対するシャルムの存することも事実である。

宇野浩二は本名格二(或は次)郎である。あの色の浅黒い顔は正に格二郎に違いない。殊に三味線を弾いている宇野は浩さん離れのした格さんである。

次手に顔のことを少し書けば、わたしは宇野の顔を見る度に必ず多少の食慾を感じた。あの顔は頬から耳のあたりをコオルド・ビフのように料理するが好い。皿に載せた一片の肉はほんのりと赤い所どころに白い脂肪を交えている。が、ちょっと裏返して見ると、鳥膚になった頬の皮はもじゃもじゃした揉み上げを残している。――と云う空想をしたこともあった。尤も実際口へ入れて見たら、予期通り一杯やれるかどうか、その辺は頗る疑問である。多分はいくら香料をかけても、揉み上げにしみこんだ煙草の匂は羊肉の匂のようにぷんと来るであろう。

いざ子ども利鎌とりもち宇野麻呂が揉み上げ草を刈りて馬飼へ

完

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