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TORENDIA

新劇の観客諸君へ

本文約3,300字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

新劇の現状と観客の在り方について論じる。西洋劇の模倣から始まった新劇は、商業主義や因襲に阻まれ停滞している。著者は、観客に対し、演劇の鑑賞法を刷新し、舞台の瞬間に韻律美を見出すことを推奨する。また、鑑賞中には感情を率直に表現し、優れた演技には惜しみない拍手を送り、未熟な舞台には厳しく反応することで、俳優の鍛錬と劇壇の健全な発展に寄与するよう、観客の能動的な参加と役割を提言する。

岸田國士

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🎧 新劇の観客諸君へ / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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私は、たしか去年の正月、某新聞の需めによつて、「劇壇へ」といふ一文を発表しました。今、築地座(多分宣伝部から)の依頼で何か書かなければならないのですが、ふと思ひついたのは、その「劇壇へ」といふ文章の中で、紙数がないために、云ひ尽さなかつた一項目、即ち、「観客へ」の希望を、この機会に敷衍させて貰はうと思ふのです。

さて、便宜上、その「劇壇へ」の冒頭を少し引用します。

『註文により、「劇壇へ」と呼びかけはしましたが、少くとも今日の私にとつて、その相手はどこにゐるのか、さつぱりわからないのであります。

劇壇とは、劇場を中心として、俳優、作者、演出家、批評家、装置家、その他演劇関係者を悉く網羅した一社会を指すものでありますから、現にそれは存在しないわけではないのですが、その社会には、今や脈絡なく、秩序なく、理想なく、希望なく、発言者なく、傾聴者なく、権威なく、輿論なく、ただあるものは、商業主義の盲断と、これを繞る因襲の跋扈のみであつて、演劇そのものは、呼べども応へざる遥か彼方に、多分猿轡をはめられて、殺せ! 殺せ! と藻掻いてゐることでせう。商業主義も可なり、因襲も亦可なりですが、演劇の社会にあつては、一方、これを刺激し、これを誘導する創造的機運が、そのどこかに動いてゐなくてはなりません。そしてそれが、絶えず何等かの形で表面に浮び上つてゐなければなりません。

わが劇壇の現状は、遺憾ながら、かういふ機運の成長を阻むあらゆる要素から成立つてゐるのです。…………………………………………………………………………………………………』

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