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TORENDIA

ブルタアニュの伝説より

本文約2,800字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

フランスの大西洋岸に位置するブルタアニュは、伝説が豊富で瞑想的な自然に包まれた地方である。著者はカルナックで過ごした一夏を通じ、石にまつわる司祭の伝説や、小人ケリオンが踊る夜の出来事、漁師をからかう牛のお化けや川に潜む怪物の話など、住民の炉辺で語られる数々の奇怪な伝承を綴る。本書は、中世からの信仰や迷信が色濃く残るこの辺鄙な漁村に伝わる、人智を超えた不可思議な現象や亡霊たちの物語を克明に描き出す。

岸田國士

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🎧 ブルタアニュの伝説より / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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ブルタアニュは、同じ仏蘭西のうちでも、著しい特色をもつた地方である。

大部分半島を形づくつてゐる処から、海そのものと離して考へることは出来ない。その海は、大西洋である。女性的な地中海にくらべて、男性的なところがある。

ブルタアニュの自然は瞑想的である。沈鬱である。空が低い。

住民は素朴である。中世風の信仰から脱しない。従つて迷信が盛んである。――どこまでが迷信だか、それはわたしにもわからない。

伝説の豊富な点で、文学的にも興味があるが、文学は文学として置いて、辺鄙な漁村の、炉辺に蹲る老婆などの口から、奇怪な物語を聞かされる面白味は、また格別である。

わたしは、一と夏をカルナックといふ村で過した。この村がまた伝説の中心地である。路ばたに転がつてゐる石ころにさへ、「いはれ」があるのに驚いた。

その昔、一人の司祭が、異教徒の軍勢に追はれてカルナックまで逃げて来た。前は海である。司祭は神の名を呼んだ。敵兵は悉く石になつた――といふのである。なるほど、今でも人間の丈ほどの石が、無数に立ち並んでゐる。これらの石は、年に一度、降誕祭の夜、川の水を飲みに行くさうである。道でそれに出遇つたものは、忽ち潰されてしまふ。

昔、この附近にケリオンといふ小人の種類が棲んでゐた。山腹に穴を開けたり、石を積んだりして、その中に棲んでゐた。石を積んだ家、それをドルメンといひ、現にそれが残つてゐて、土地の名物になつてゐる。彼等はどんな大きな石でも平気で持ち上げることができたらしい。

彼等は、月夜だと、牧場の草の上で踊る。歌を唄ひながら踊るのである。

「月曜、火曜、それから水曜」

手をつないで輪を作り、面白さうに、この文句を繰返す。

「月曜、火曜、それから水曜」

或る晩のこと、佝僂の仕立屋が、仕事の帰り路に、此の歌を聞きつけて、踊りの仲間入りをさせてもらつた。然し、歌の文句が、あんまり単調なので閉口した。それで、

「月曜、火曜、それから水曜……」と来たときに、

「それから木曜」と続けて見た。

「おや」一同は顔を見合はせた。

「わるくはねえ」と、親玉らしいのが云つた。そこで、みんなが、今度は、

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