本文へ移動
TORENDIA

「モンテーニュ随想録」(関根秀雄君訳)

本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

関根秀雄訳によるモンテーニュ随想録の翻訳が、文学史上劃期的な収穫であると評価する推薦理由を綴る。フランス文学の古典であり近代思潮の源泉でもある原書の価値を説くとともに、訳者の卓越した教養と才能による言語表現の精度を論じる。また、この翻訳が文芸懇話会賞の候補に値する意義と、時代の精神的自由を象徴する文化的功績を主張する。

岸田國士

速度
🎧 「モンテーニュ随想録」(関根秀雄君訳) / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 2

私は本年度文芸懇話会賞候補作品として、関根秀雄訳「モンテーニュ随想録」を推薦したものの一人である。

同じく本書を推薦した他の会員諸氏は、何れもそれぞれの理由をもつてゐる筈だが、私は特に委員会の指命に従つて、自分一個の推薦理由を公表することにする。

一、文芸懇話会賞は翻訳にも与へ得る規定がある以上、毎年といふわけには行くまいが、特に翻訳文学史上劃期的な収穫と見るべきものには、これを適用すべきであるといふのが私の意見であつた。幸ひ昨年度に於て、関根秀雄氏の「モンテーニュ随想録」三巻の名訳が完結し、専門家の間は勿論、これを識る人々の満場一致的賞讃を博したことから見て、本書の如きは最も適当な候補作品であると私は信じた。 二、翻訳の価値は何によつて決するかといふ問題は、甚だデリケエトである。一方、創作との比較評価の如きは、まつたく無意味に近い。が、しかし、翻訳のうちから一つを択ぶといふ場合に、自らその判断には基準が生じると思ふ。文学鑑賞の態度に、自ら一定の方向が伴ふのと同様である。私は次の諸点から、関根君の訳業を昨年度随一と断定する。 イ 原書の古典的、文化的価値。

「モンテーニュ随想録」は仏蘭西文学の有する、最も貴重な古典の一つであるのみならず、近代思潮の一大源泉として、世界文芸史上、その影響が甚だ深く、広く、且つ決定的である。云ふまでもなく、近代文明の黎明期に於て、仏蘭西が生んだこの良心と叡智の書が、現代の日本に齎らされて如何なる意義があるかといふことは、誰よりも先づわれわれ文学者が考なくてはならぬことであり、読書の愉悦の完きを知らしめること、当今、この書に如くものはないと私は考へる。

岸田國士の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本