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TORENDIA

選後に

本文約910字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

芥川賞の選考において、候補作の評価や文学賞のあり方を綴る。筆者は、選考を通じて感じた候補作品の質の高さに触れつつ、戯曲の選考対象としての不透明さを指摘する。推す作品として、少年の物語を描き新鮮さと美しさを備えた「夏草」を挙げる。また、成熟した文学的才能を感じさせる「闘牛」の力量を認めつつ、他にも「還らざる旅路」「日本の牙」「天命」「ロッダム号の船長」といった各作品の持つ個性を分析し、それぞれの特色や興味を論じる。

岸田國士

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🎧 選後に / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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今度は読みごたへのある作品が多く、だいたい粒がそろつてゐて、たいへん張り合ひがあつた。それだけにまたそのうちに幾篇かは、優劣をきめにくい長所に支へられてゐて、一篇を選びだすのに困難を感じた。

いろいろな文学賞があつて、それぞれ特色のある立場で、ほゞ限られた傾向のもののうちから、一応出来栄えのいいものを推すといふことであれば、このうちのいくつかは、おそらく何々賞に値するであらうと思はれた。

文学賞などといふものをさう厳密に考へなくてもよささうであるが、私の望むところは、芥川賞の性格をもうすこしはつきりさせて、なるだけ無理のない結果が得られるやうにしたいものだと思ふ。この賞も創作としての戯曲を除外してあるわけではないのに、一度も選にはいらぬといふのも片手落の感があり、今度も、例へば福田恆存の「キティ颱風」のやうな秀作が予選の中にさへ数へられてゐないことを私は指摘したい。

私は、結論として、ともかくも「夏草」(前田純敬)を第一に推すことにした。

私流に考へて、芥川賞ならこの作品に、といふぐらゐな意味においてであつた。幼々しい感動があり、健康な意欲も目立ち、可なり確かな眼で現象も捉へられてゐる。主人公たる少年のうちに生きてゐる作者のすがたには、とくに、銘記すべき一つの時代を暗示するものとして、私は心をうたれた。多少冗漫な個所もなくはないし甘いといへば甘いところがあるにはある。しかし、それらをひつくるめて、やはり新鮮で美しい物語になつてゐる。

「闘牛」(井上靖)は、わが国では珍しい、既に成熟を感じさせる、一個の文学的才能の所産である。常識に富んだ、余情ある巧みな作品がどしどし書ける作家の手腕を示してゐる。現代小説の新しい一つの領域は、かういふ感覚によつて拓かれるともいへるであらう。衆目の見るところ、入賞作として、これも、当を得たものである。私も敢て反対する気持はない。

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