文学座第一回試演に際して
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あらすじ(AIが作成しました)
文学座は三人の幹事が任期交代制で運営の責任を負う組織として発足する。初公演が延期される中で、作者や俳優の訓練という観点から、公衆の支持を仰ぎつつ試演の機会を設ける。予算を削減し、単純で効果的な新工夫を凝らした装置の導入を通じて、写実万能の弊を打破する試みを行う。また、新劇の本格的俳優として再出発する徳川夢声の参加や、稽古を重視する新体制の可能性についてを綴る。
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文学座は去年の六月以来、久保田万太郎、岩田豊雄両氏並に私の三人がよりより相談をして大体のプランを樹て、九月に、主だつた協力者の初顔合せをし、次で、内輪の結成式を挙げました。
この劇団の組織上の特色は、われわれ三人が幹事といふ格で共同の義務を負ひつゝ、しかもそのうちの一人が、六ヶ月を任期として、交代に実際上の責任者たることを定めてあることです。
今期の当番幹事たる私は、若干、専断的に事を運びました。
去年の十一月、第一回公演を行ふ筈で準備が進められてゐたにも拘はらず、突然、この企劃を延期するの止むなきに至つた事情は、要するに、今日に於ても、なほ解消されてはゐないのです。友田恭助君の戦死による田村秋子さんの出演不能、他から俳優を借りて来るとすれば必ず我慢しなければならぬ稽古不足、専属として将来有望な人達はゐても、その平均年齢は、われわれが望むそれより十五以上少いといふ事実など、到底満足な公演が出来る筈はありません。たとへやれたとしても、出し物の範囲が極度に制限され、少くとも、演技力の一般的向上を計算にいれなければ、私としては、今すぐに、文学座の仕事を見てくれと云つて、その舞台を公表する気にはなれません。
しかし、俳優の訓練といふ点から云つても、作者の修業といふ点から云つても、公衆の眼と耳とは、誠に必要欠くべからざる教科書であり、教師なのでありますから、甚だ勝手な云ひ分ですが、もうしばらく、文学座のために、支持と協力を与へられる意味で、今度のやうな「試演」を観ていたゞきたいと思ひます。さういふわけで、宣伝などは殆どやりませんし、経費も非常に切りつめてあります。その代り、稽古には、一ヶ月半といふ時日を費しました。このシステムは、私流かも知れませんが、こゝから何かゞ生れるといふ確信をもつてゐます。