本文へ移動
TORENDIA

優にやさしき心

本文約4,100字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

戦時下の日本国民が共通の矜持を持つ中、著者は国民全体の精神と生活の鍛錬の必要性を説く。家庭での躾けや若者の自律的な修養を通じて、日本人が本来備えるべき品位と温かみのある「優にやさしき心」を養うことを提唱する。また、東亜諸民族に対する指導的立場において、物質文明を超えた真の精神的魅力を示すことの重要性を論じ、日々の生活における自戒と実行こそが新たな国家建設の基盤となると主張する。

岸田國士

速度
🎧 優にやさしき心 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 5

今こそ日本人といふ日本人は一人残らず、共通の感激、共通の幸福感、そして、共通の矜りをもつてゐるといふことがはつきり云へます。われわれは、われわれの手によつて一日一日新しく、しかも偉大な歴史を書き綴つてゐるのであります。

世界の眼は、悉く、われわれの上に注がれてゐます。日本は何をしでかすか? この興味は、敵と味方とで全くその性質は違ひますけれども、半ば驚嘆を交へた心理的波紋の大きさから云へば、ひとしく、類例のないものでありませう。

ところで、かういふ衝撃を地球の全面に与へた日本の力なるものは、そもそもどこにあるか? それを考へてみなければなりません。

もちろん、国体の尊厳なるところ、民族の優秀なるところにありますが、われわれ国民のすべては、あらゆる立場に於て、この力を自ら信じてゐたかといふと、必ずしもさうは云へません。なぜなら、この力は、時あつて忽然と現はれる力のやうに見え、また、平生、ある点にかけては、かういふ力をもつてなどゐさうにないといふ例が間々あるのであります。

私ははつきり申しますが、現代日本のすべての社会を通じて、この「日本的な力」を完全に備へ、これを有効に発揮し得るのは、ひとり軍隊のみだと信じます。なぜなら、そこには、職責遂行のために必要な精神と技術とを絶えず鍛へあげる純粋にしてかつ厳密な掟があるからであります。

玉磨かざれば光なしであります。

如何に立派な歴史を背負ひ、如何にすぐれた素質をもつた民族でも平和に慣れ、安逸をむさぼり、身心の鍛錬を怠つたならば、一朝事ある場合は勿論、長い間には、次第に、自立自衛の力を失ひ、その文化は頽廃し、いはゆる老朽国民に成り果てるのであります。日本民族は、いくたびかの試煉によつて、国家の基礎を益々固めては来ましたが、かの明治の建設期を経て大正に入る頃から、一種小成に安んずるといふやうな風潮が社会の一隅に頭をもたげて来ました。

西洋文明の軽薄な模倣が際限なく行はれました。

岸田國士の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本