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TORENDIA

外米と農民

本文約3,400字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

旱魃に見舞われた地方の農民は、配給される外米混入の飯のまずさに悲鳴を上げ、胃腸を壊す者も現れる。栄養面や食感から外米を嫌う人々は、内地米を求めて様々な工夫を凝らし、健康上の理由や伝手を頼って内地米を手に入れようと奔走する。生活の基盤である食を巡り、農村や都会で繰り広げられる切実な営みと、度重なる米の配給制度の変更が人々の生活に与える影響を綴る。

黒島傳治

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🎧 外米と農民 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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隣家のS女は、彼女の生れた昨年の旱魃にも深い貯水池のおかげで例年のように収穫があった村へ、お米の買出しに出かけた。行きしなに、誰れでも外米は食いたくないんだから今度買ってきたら分けあって食べましょうと云って乗合バスに乗った。近所の者は分けて呉れることゝ心待ちに待っていたが、四五日しても挨拶がない。買って来たのは玄米らしく、精米所へ搗きに出しているのが目につく。ある一人の女が婉曲に、自分もその村へ買い出しに行こうと思うが売って呉れるだろうかとS女にたずねてみた。農家は米は持っているのだが、今年の稲が穂に出て確かにとれる見込みがつくまで手離さないという返事である。なにしろ田地持ちが外米を買って露命をつながなければならないようなことはまことに「はなし」ならぬ話である。

昨年、私たちの地方では、水なしには育たない稲ばかりでなく、畑の作物も──どんな飢饉の年にも旱魃にもこれだけは大丈夫と云われる青木昆陽の甘藷までがほとんど駄目だった。村役場から配布される自治案内に、七分搗米に麦をまぜて食えば栄養摂取が十分になって自から健康増進せしむることができると書かれてあって、微苦笑を催させずに措かなかったのはこの二月頃だったが、産業組合購買部から配給される米には一斗に二升の平麦が添加されることになった。七分三分、あるいは六分四分に米麦を混合して常食としている農民は、平常から栄養摂取を十分にやっているわけだが、一年中食うだけの麦を持っている者も、組合から配給される平麦を買って、持っている麦があまるならそれは玄麦で売れというのである。誰れにも区別なく麦を添加するのは、中に米ばかりを食って麦を食わない者が出来るのを妨ぐためではあろうが、畑からとれた麦を持っている農民が、その麦を売って、又麦を買うということは、中間商人に手間賃を稼がせるばかりで、いずれの農家でも頗る評判が悪かった。

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