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TORENDIA

選挙漫談

本文約2,600字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

選挙における金権政治の実態と、貧困に喘ぐ百姓たちの置かれた状況を論じる。既成政党の欺瞞に晒され、自らの利益のために投票を売る農民の姿や、政治的自覚を持てずにいる彼らに向けて、なぜ貧困から脱却できないのかという問いを突きつける。また、無産政党による政治理論の難解さや、農民と労働者の連帯を阻む意識の壁を指摘し、百姓が自ら立ち上がるために必要な真の政治教育のあり方を模索する。

黒島傳治

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🎧 選挙漫談 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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投票を売る

投票値段は、一票につき、最低五十銭から、一円、二円、三円と、上って、まず、五円から、十円どまり位いだ。百姓が選挙場まで行くのに、場所によっては、二里も三里も歩いて行かなければならない。

ところが、彼等は遊んでいられる身分ではない。丁度、秋蚕の時分だし、畑の仕事もある。そこで、一文にもならないのならば、彼等は棄権する。二里も三里もを往って帰れば半日はつぶしてしまうからだ。

金を貰えば、それは行く。五十銭でもいゝ。只よりはましだ。しかし、もっとよけい、二円でも三円でも、取れるだけ取っておきたい。取ってやらなければ損だ。

どうして、彼等が、そういうことを考えるようになるか。

彼等も昔の無智な彼等ではない。県会議員が、当選したあかつきには、百姓の利益を計ってやる、というような口上には、彼等はさんざんだまされて来た。うまい口上を並べて自分に投票させ、その揚句、議員である地位を利用して、自分が無茶な儲けをするばかりであることを、百姓達は、何十日[#「何十日」はママ]となく繰返えして見せつけられて来た。

だから、投票してやるからには、いくらでも、金を取ってやらなければ損だ、と、そういう風に考えだしたのである。

永久の貧乏

百姓達が、お前達は、いつまでたっても、──孫子の代になっても貧乏するばかりで、決して頭は上らない。と誰れかに云われる。

彼等は、それに対して返事をするすべを知らない。それは事実である。彼等は二十年、或は三十年の経験によって、それが真実であることを知りすぎているのである。

しかし、彼等は、どうして貧乏をするか、その原因も知らない。彼等は、貧乏がいやでたまらない。貧乏ぐらい、くそ嫌いなものはない。が、その貧乏がいつも彼等につきまとっているのだ。

これまでの県会議員や、国会議員が口先で、政策とか、なんとか、うまいことを並べても、それは、その場限りのおざなりであることを彼等は十分知りすぎている。では、彼等を貧乏から解放してくれるものは何であるか。──彼等には、まだそれが分っていない。分っている者もないことはない。しかし、大部分の百姓に、それがまだ分っていない。

俺達は、何故貧乏するか。

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