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TORENDIA

小説・評論集「文学母胎」後記

本文約710字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

李永泰という人物を見つめた短篇小説からなる第一部、文学への考察や空想を綴った第二部、そして戦争下の台湾や中国の土地の情勢と歴史的進展を追った文学ノートである第三部で構成される。著者の創作過程における思考の変化や、当時の社会背景が文学の母胎としてどのように作用しているかを明らかにする作品集である。執筆当時の時代の刻々な変化を見据えつつ、作家が抱く文学への真摯な考察や多様な視点を収める。

豊島与志雄

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本書の性質を一言しておく。

私は嘗て、李永泰なる人物を見まもっていた。彼の時折の行動について、四つの短篇小説を書いた。最後に、彼の決定的発展段階を示す中篇或は長篇を、書くつもりでいた。その時、彼の前面に、他の人物が大きく立ち現われてきた。如何なる人物であるかは、他日の作品に譲って茲には云うまい。そういうわけで、李永泰は一応このまま放棄することになった。放棄された李永泰は、私にとっては、小さな愛すべき存在であると共に、他の新たな人物の背景的母胎でもある。――これが本書の第一部。

新たな人物の、或は新たな作品の、生成発育を見まもりながら、作者というものは、いろいろなことを考えるものだ。甚だ真面目な考察に耽ることもあれば、甚だのんきな空想を逞うすることもある。もはや、一つの人物や一つの作品を離れて、目にふれ耳にはいるものについての、謂わば一般的な文学ノートが作られる。――これを少しく整理したものが本書の第二部。

だが、日本はいま、戦争と発展とのただ中にある。このことは当然、吾々の文学一般の背景的母胎となる。私はこの母胎を、台湾や北支や中支に探ってみた。これは旅行記ではなくて、やはり一種の文学ノートである。但し、これらの土地の事情は刻々に変化しつつあるので、文章のそれぞれに日付をつけておいたし、その日付を考慮に入れて読んで貰いたいのだが、然し、急激な歴史の進展の底の変らぬものを、多少は捉えてるつもりでいる。――これが本書の第三部。

以上、著者の立前だが、そんなことは無視して、ただ、ちょっと小説をのぞき、それから文学漫談をして、それから少しく旅行をしてみる。それぐらいな気持で読んで頂いてもよろしいのである。

完

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